熊本県指定天然記念物「寂心さんの樟」が美しい巨樹の理由

 1990頃年に公園整備・道路改良工事により根元に盛り土されて樹勢が衰退していましたが、2015年に盛り土撤去などの樹勢回復工事を行い順調に経過しております。これは地元住民(北迫)による月2回の積極的な清掃活動や見守りによる支えではないかと思います。国指定のクスノキが24本ありますが、地元の熱意と行動はトップクラスで、これが日本で最も美しいクスノキと云われている由縁ではないかと考えています。地元からこれだけ多くの人に愛されて感謝されているクスノキ巨樹は珍しいのではないでしょうか?

高所診断・南側

高所診断・南側

高所診断・樹冠

高所診断・樹冠

枯れ枝剪定

枯れ枝剪定

枯れ枝剪定

枯れ枝剪定

清掃活動・落ち葉集積

清掃活動・落ち葉集積

側道清掃・ブロアー

側道清掃・ブロアー

阿蘇北側復旧ルートの車帰水源「水神木」移植その後

 阿蘇北側復旧ルートの二重峠トンネル阿蘇口に車帰水源があり、そこに樹齢約300年のヤマモミジ(幹周2.8mの巨樹)が水神さんの木として祀られていました。その大切な水神木が北側復旧ルートの支障木になりましたので離れた場所に移植を依頼され、2017年に移植(総重量18t)が完了し、さらに3年間の養生管理も継続できることになり現在は樹勢も回復しています。阿蘇北側復旧ルートは令和2年10月4日から一般開通し、阿蘇観光の大きな起爆剤として期待されています。移植された水神木(写真-1)は二重峠トンネルの車帰出口の北側で見守っており、阿蘇北側復旧ルートの開通はコロナ禍での最も嬉しいニュースの一つになりました。水神木さんが引っ越ししていただいたお蔭です。車帰水源も無事でおいしい水が流れています、無事に竣工でき感謝ですね! まもなく霜が降りれば紅葉が美しく車帰水源池に映えて、歓迎されるでしょう。

移植前 車帰水源の水神木(ヤマモミジ)

移植前 車帰水源の水神木(ヤマモミジ)

移植後・青〇が元場所(阿蘇出口)

移植後・青〇が元場所(阿蘇出口)

二重峠トンネルの阿蘇出口(右側に移植)

二重峠トンネルの阿蘇出口(右側に移植)

移植後3年の水神木(写真-1)

移植後3年の水神木(写真-1)

赤斑葉枯病の治療例(その2)

熊本市東区花立 A氏宅  樹齢50年のクロマツが罹病しました。

令和2年8月6日 治療開始 1回目
活力剤(バイオビリオン100倍)・殺虫剤(スミチオン)・植物調整剤など

令和2年8月20日 2回目 罹病葉は落葉しはじめた。マツカレハ(毛虫)の駆除。
毎日、葉水をかけて樹体温度をさげます。高温・乾燥・強光対策をしっかり!

令和2年8月31日 3回目  剪定後の新芽が伸び始めています。

令和2年9月14日 4回目   罹病葉は落葉して、樹勢が回復の兆し。

令和2年9月26日 5回目

 

来春の新芽が発芽(冬芽)しています。

来春の新芽が発芽(冬芽)しています。

5回目(最終散布完了) 殺菌剤はトップジンM水和剤を使用。

立田山ヤエクチナシで白川左岸(緑の区間)を癒しの場に!

 立田山ヤエクチナシを浅井東一先生が発見されて100年目を記念しての植栽で、国交省熊本河川国道事務所(白川出張所)の全面的な協力で完成しました。自生地での立田山ヤエクチナシは日照不足等で消滅した可能性があります。挿し木繁殖した苗(DNA保存木)で緑地帯を造り、絶滅しかかった立田山ヤエクチナシが国指定天然記念物であることを考え、「熊本ふるさとの樹木」として貴重な樹種であることを共に学んでほしい場所にしたい。

 明午橋の橋詰に立田山ヤエクチナシ(泰勝寺系)だけで合計400本余りを群植しており、自生していた立田山(国指定天然記念物)を背景にして、熊本大学理学部も眺められる場所に植えさせていただきました。今年の開花時期には間に合いませんでしたが、しっかりと養生管理して来年は立派な純白の花が咲くように心がけしています。さらに芳香も白川の流れに沿って漂うと思えば心が癒されます。熊本市民の憩いの場としての「緑の区間」が立田山ヤエクチナシの植栽で楽しみが又一つ増えたと考えています。「緑の区間」を指導していただいた熊本大学の星野先生・増山先生には感謝しています。

明午橋 橋詰

明午橋 橋詰

白川左岸の法面植栽

白川左岸の法面植栽

立田山(右奥)を望む)

立田山(右奥)を望む)

開花状況(7月初)

開花状況(7月初)

白川小学校の大エノキは生き残れるか!

今村樹木医の挑戦

 熊本市立白川小学校のシンボルツリ-の大エノキが伐採の危機に瀕しています。樹高20m・幹周4.0m・枝幅15mの巨樹で、樹齢は約150年と云われています。主幹には開口部が複数あり、大きな空洞部では筒抜けになっている場所もあり腐朽率は60%以上と推定されます。現状のままでは強風で倒木の可能性が高いと診断される危険木です。さらに石のサークルで根元を囲い、盛り土状態で支持根が発達していないのも気がかりです。シンボルツリ-でなければ、伐採は当然かもしれません。1945年7月の熊本大空襲で焼け残ったエノキの貴重な1本でもあり、歴史の生き証人をどうしても助けたいのです!!

着工前・東側

着工前・東側

着工前・北側

着工前・北側

写真-1・筒抜け空洞

写真-1・筒抜け空洞

写真-2・焼け跡・大空襲か雷

写真-2・焼け跡・大空襲か雷


樹冠状態・枯れ枝が多い

樹冠状態・枯れ枝が多い

幹周4.0m

幹周4.0m

地上部の台風・倒木対策として、切り詰め剪定・ワイヤ-ロ-プ巻・幹巻・蒸散抑制剤散布などの作業をしました。

切り詰め剪定

切り詰め剪定

切り詰め剪定

切り詰め剪定

ワイヤ-ロ-プ(3重巻)3ヶ所で補強

ワイヤ-ロ-プ(3重巻)3ヶ所で補強

幹巻・緑化テ-プ

幹巻・緑化テ-プ

完了・東側

完了・東側

完了・北側

完了・北側

落葉後に土壌改良、養生管理を実施しながら支持根の強化を図り、自分の力で倒木しないような強い根系を目指します。児童会も水かけ、声掛けで応援してもらいたい。

令和2年8月24日~25日

「一心行の大桜」つながるプロゼクト

令和2年8月21日 中松小 6年生

阿蘇郡南阿蘇村立中松小学校は今年度で廃校になります。地域にある「一心行の大桜」を接ぎ木(芽接ぎ)して6年生(13名)がそれを管理して移転先の新白水小学校へ持っていく計画です。さらに宮城県東松島市立鳴瀬桜華小学校(新設)からの要望もあり接ぎ木苗(写真-7)を寄贈することになりました。 中松小学校は熊本地震、鳴瀬桜華小学校は東日本大震災という大きな災害を両校は経験しましたが、助け合いながら交流を深めて復興を目指してきました。来春に中松小の6年生が鳴瀬桜華小へ「一心行の大桜」苗を贈り、復興のシンボルツリ-として応援の絆を強くします。桜つながるプロゼクトの第2弾です。
このプロゼクトは所有者のご協力で実施されています。感謝です!

2009年4月初 開花

2009年4月初 開花

2020年8月21日

2020年8月21日


接ぎ穂の調整と芽の確認

接ぎ穂の調整と芽の確認

台木(オオシマ桜)の説明

台木(オオシマ桜)の説明


6年生の授業・座学

6年生の授業・座学

芽接ぎ木作業(15本)オオシマ桜台木

芽接ぎ木作業(15本)オオシマ桜台木


芽接ぎした苗の管理

芽接ぎした苗の管理

一心行の苗(菊池圃場・写真-7)

一心行の苗(菊池圃場・写真-7)


中松小6年生13名と15本の「一心行の大桜」のクローン苗

中松小6年生13名と15本の「一心行の大桜」のクローン苗

カシノナガキクイムシ

 ミズナラ(コナラ雑種)の被害木で、カシノナガキクイムシからのマスアタック(集中攻撃)されて枯死しています。根元に落ちたフラス(樹紛)は異様な臭いがしています。樹高20m・幹周2.8m・枝幅20mの大径木(写真-1・2・3)などが犠牲になり、原因としてカシノナガキクイムシが「カビ菌」を運び枯死につながったとされています。この夏は県内各地で枯れが目立ちます。
 写真は立田山(標高157.7m)での出来事ですが、被害樹種はツブラジイ、コナラ・アラカシなどの大径木に加害して枯死させています。さらに国指定の阿蘇北向谷原始林(標高200m~500m)にも被害が発生しており防除も困難で、発生が止まらず拡大している状況です。

穿孔痕・ミズナラ(写真-1)

穿孔痕・ミズナラ(写真-1)

フラス(樹紛)の堆積(写真-2)

フラス(樹紛)の堆積(写真-2)

ミズナラの枯死(立田山)写真-3

ミズナラの枯死(立田山)写真-3

ツブラジイとアラカシ(立田山)

ツブラジイとアラカシ(立田山)

ヒメシロダモ Neoltsea sericea Koidz form premature Okuyama

採集日    令和2年8月2日(日)

熊本市北区龍田陳内2丁目の立田山で発見しました。シロダモの横に自生しており、高さ15m・幹周1.0mの大径木で、シロダモの葉よりも小さく広披針形で丸味があり結実数が多い特徴があります。有用樹木図説(林弥栄著1969年)によれば、本州(関東中部、近畿、中国)九州に分布しており、小木でも開花結実するもの。 葉柄は3㎝くらい、葉身は10~15㎝、葉幅は4~5㎝で葉色はシロダモよりも暗緑色で葉裏は白い。ヒメシロダモについては、鑑定中ですからご存じの方はご教授をお願いします。

ヒメシロダモ

ヒメシロダモ

シロダモ

シロダモ

ヒメシロダモは生長が遅く矮性気味。

ヒメシロダモは生長が遅く矮性気味。

シロダモは生長が速く、大葉。

シロダモは生長が速く、大葉。

天草市での公園管理講習会

令和2年6月30日                今村順次と今村能子

 大雨の中ですが、20名くらいの人が集まり「殉教公園」の維持管理などのお話をさせていただきました。公園管理に熱心な人が多く、施肥時期・蘚苔類の除去方法・病害虫の駆除・ヒノキバヤドリの切除方法・珍しい樹種の名前(コバノチョウセンエノキ、ランシンボク、モクマオウ)などが植栽されていました。この後、「広瀬公園」で樹勢衰退のソメイヨシノの管理などの説明をしました。

園内観察

園内観察

園内観察

園内観察

ヤブツバキに寄生しているヒノキバヤドリギ

ヤブツバキに寄生しているヒノキバヤドリギ

モクマオウの大径木

モクマオウの大径木

菱形小学校のカタルパを元気に!

農林水産大臣認定 第316号
樹木医 今村順次

樹種  カタルパ(アメリカキササゲ)
樹齢  約100年
形状  樹高25m・幹周3.70m・枝幅30m
調査日  令和2年6月25日(木)

全景

全景

根本

根本

根本周辺

根本周辺

下枝

下枝

総合診断
令和2年の開花時期が少し遅く、花の大きさも以前の花と比較して小さくなっています。樹勢の衰退化が診られ、原因としては、根元周辺の土壌緊密化による根系の成長不良によるものと考えられます。葉も小さくなり、花数も少なく、樹冠に枯れ枝があります。取り急ぎ、実施すべきは台風による倒木(枝折れ)対策が最優先と考えられます。下枝は切り詰め剪定で、バランス良く剪定し切り口には殺菌剤・人工樹皮を塗布します。
落葉期に根元周辺(グランド)の土壌改良して空気の供給を増やし、根量の増加で、樹勢の回復を目指します。 6月25日に幹周を測定したところ3m70㎝でしたから、2014年に計測した3m53㎝より17㎝大きくなっていました。巨樹の記録更新ですね。

以上