樹木診断・治療歴・施工例について

1. 熊本県指定天然記念物 兜梅 天草市本渡 2000年~2001年

2000年の夏、兜梅の新芽が出ず、葉が無くなり枯死寸前の状態で相談がありました。強剪定・盛土やPH過剰などで根系が腐れており、それらの障害が原因と思われました。対策として翌日に寒冷紗を掛けて遮光し、樹体温度を下げるために延慶寺さんにも協力していただき潅水しました。さらに活力剤散布などをしましたが翌春の新芽は4月になっても伸びません。緊急避難措置として、接木(接穂は他品種)を探してその夏をしのぎました。翌春に、兜梅から採集した穂(自前)で接ぎ直しをし、その後に前年の接穂は全て切除しました。現在は、健全な天然記念物として延慶寺さんが大切に管理養生されています。この兜梅には、実がならないという伝説があります。

before1兜梅 平成12年7月1日 不出芽状況

兜梅 平成12年7月1日 不出芽状況

平成13年6月1日

平成13年6月1日

2.国指定天然記念物 麻生原のキンモクセイ 下益城郡甲佐町 2002年~

井元樹木医と共同で作業し、ベッコウダケ(腐朽菌)の防除は井元氏が主に行い、盛土搬出や樹勢回復は今村が担当しました。腐朽菌の専門家は枯れる可能性が高いと云われましたが、子実体(きのこ)の除去や活力剤散布など丁寧に施工した結果、樹勢が回復してきました。この樹はキンモクセイではなく、ウスギモクセイです。10月はじめ頃に開花して香りが広く漂い、地元では見物客にお菓子・お茶で「お接待」として毎年歓迎していただけます。地元の宝物として大切に保護されています。

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ベッコウダケの発生

ベッコウダケの消滅

ベッコウダケの消滅

樹勢回復したモクセイ

樹勢回復したモクセイ



3.国指定名勝 松浜軒のクロマツ 熊本県八代市 2013~2015

松が枯れはじめたと、6月に連絡があり赤班葉枯病が発生していました。庭園内に、約20本のきれいに剪定管理されたクロマツがありますが、ほとんどが罹病していた。国指定名勝ですから、観光客も多く早急な治療が求められた。防除開始後、1週間くらいで新芽が伸び始め、8月には回復し9月には枯葉は見えなくなり防除は完了しました。

平成27年6月 罹病中

平成27年6月 罹病中

7月

7月

8月

8月

9月 防除完了

9月 防除完了

10月 再発なし

10月 再発なし

11月 健全な松

11月 健全な松



4.熊本県指定天然記念物 「寂心さんの大樟」 熊本市北区北迫町 2016年

26年位前に、盛土されてから樹勢が衰弱しはじめ、昨年8月の台風により大きな被害を受け、さらに1月の寒害やクスノキ炭疸病などにより衰弱しました。
平成22年から熊本市の要請があり樹木診断を行い、樹勢の衰退化が診られることを報告した。ピカス診断による空洞化(腐朽)調査、低所診断、高所診断、土壌分析、長谷川式土壌貫入試験、葉色比較調査、水分含有量、土壌断面などの各種調査をしました。
平成24年11月に熊本日日新聞社の資料室から、1972年の写真(写真-1)を発見して多量の盛土がされていることが判りました。この1枚の写真により、寂心さんの大樟が衰弱した原因は盛土であると確信しました。総合的に判断して、盛土を発掘(除去)し、元の状態(原風景1972年)に戻すことから樹勢回復はスタートします。

平成26年8月(高所診断)

平成26年8月(高所診断)

平成27年7月

平成27年7月

平成27年8月26日台風後

平成27年8月26日台風後

平成26年4月

平成26年4月

1972年(平成47年)(熊本日日新聞)

1972年(平成47年)(熊本日日新聞)

昭和55年(西嶋氏)

昭和55年(西嶋氏)




平成28年9月28日から、弊社で樹勢回復工事を引き受けることになりました。一生懸命に治療します。

5.クスノキ炭疸病の防除 熊本市北区楠7丁目地内 街路樹95本(延長2.5km)

平成27年6月頃に地元の要請で強剪定を実施して、新芽がクスノキ炭疸病に罹り枯死状態(写真-2)へと悪化して、担当者も治療方法がないと困っていました。北部土木センター長からの要請により、ボランティアで技術指導(防除)しました。現在は健全なクスノキに再生でき、市道の浄化・冷却・美化に貢献しています。

写真-2 (2016年3月枯死寸前)

写真-2 (2016年3月枯死寸前)

2016年8月回復中

2016年8月回復中



6.県指定天然記念物 池尻の唐傘松  2010年~

樹齢300年以上で県指定天然記念物の唐傘松(アカマツ)です。マツノザイセンチュウ病に罹らないように、地元の人々による作業で頑張って管理されています。

2015年

2015年

2015年

2015年




唐傘松の接木による後継樹が2本ありましたが、1本は2年前に樹脂を流しながら枯死しました。枯死原因としては、いろいろあると考えられます。その中で野焼きされていたのでそれを中止してもらいました。その後の経過として、アカマツの樹脂の流失も止まり樹勢が回復しましたので、野焼きが原因だったかもしれません。

後継樹

後継樹

樹脂の流失

樹脂の流失

樹勢回復しました

樹勢回復しました



7.立曳き工法(クスノキ) 2014年 白川左岸(緑の区間)  熊本市中央区大江

白川左岸(緑の区間)で根回ししていたクスノキ巨樹2本の立曳き工法による移植工事を実施しました。伊勢造園(株)さんの元請による作業で、チームワークも上手くでき楽しい思い出になりました。伝統技術の継承という意味からすれば、受け継ぐことができたと思います。富士植木(株)さんの技術指導での実施です。

立曳きの仲間

立曳きの仲間

直径7.0mの巨大な根鉢

直径
7.0mの巨大な根鉢



8.厄除けの夫婦楠  北岡神社 熊本市中央区春日 2006年

北岡神社(熊本市)の参道に自生している2本のクスノキ巨樹(樹齢1000年)があります。新設バイパス道路拡張工事により、厄除けの夫婦楠の根元を通過することになり根系切断と樹勢回復を同時に施工しました。



9.シロアリ防除   2005年~

ベイト剤・防蟻剤による駆除をしました。イエシロアリは腐朽化した材などを食べますが、健全な生木はほとんど食べないと思います。防蟻剤をコロニーに直接散布しても樹木が枯れてきたということはありませんでした。

熊本市街路樹のアメリカ楓

熊本市街路樹のアメリカ楓

新町のアオギリ空洞部

新町のアオギリ空洞部

熊本県庁プロムナードのイチョウ並木

熊本県庁プロムナードのイチョウ並木

イエシロアリ

イエシロアリ



10.国指定天然記念物 「下城の大イチョウ」熊本県阿蘇郡小国町

樹高28m 幹周12m 樹齢1000年といわれています。2000年(平成12年)に、強制通気による樹勢回復と周辺整備工事を行い、現在も元気な樹勢を取り戻しました。