ヨドガワツツジの伝説

写真-1 花

写真-1 花

写真-2 葉

写真-2 葉


 チョウセンヤマツツジは対馬(九州)、朝鮮半島に自生しており紅紫色の一重咲きで、その雄蕊が弁化したものをヨドガワツツジ(R・var.yedoense)と云われています(写真-1)。半落葉の低木で4月末に開花(南小国町)し、ボタンツツジとも呼ばれ葉は細長い披針形で葉脈が浮き上がっており(写真-2)、日本へは15世紀頃に渡来したと云われ、チョウセンヤマツツジの変種として登録されています。

 ところで九州地方では、ヨドガワと呼ばれていたツツジ群がありました。これは100年位前に、関西の淀川沿いで自生していたツツジ(モチツツジ)を植木市に出荷する時に産地名でヨドガワと名付けていましたので、それから大輪で紅花系統のツツジをヨドガワと呼ぶようになったそうです。現在では、ヨドガワという名前は消滅して、「大輪で園芸的価値の高いもの」をヒラドツツジ(オオムラサキ・ケラマツツジ・キシツツジ・リュウキュウツツジ・モチツツジなど)と呼ぶようになっています。ヒラドツツジという名称は昭和30年代に国立久留米園芸試験場(久留米市)の田村輝夫博士が平戸島のツツジ群を調査したところ多くの品種が誕生しており、それらを総称として名付けられたそうです。

オオムラサキ

オオムラサキ

曙(アケボノ)

曙(アケボノ)

シロタエ

シロタエ

丁字桜を探して、雁俣山へ登山

4月8日に、国道445号沿いに咲いていた丁字桜桜(ヤマザクラ交雑)と思われ、基本種とは少し異なるが、萼筒が長く花梗などに毛が多くある。泉町葉木にて。

標高800mくらいの場所で撮影したヤマザクラ(美里町早楠)。
雁俣山の山頂のヒカゲツツジ。

雁俣山の山頂のヒカゲツツジ。

群落しています。

群落しています。

雁俣山1315mです。71歳で登り、あっぱれ!

雁俣山1315mです。71歳で登り、あっぱれ!

カタクリの花(寒かったので開花前)

カタクリの花(寒かったので開花前)

ツクシシャクナゲは、花弁が7裂で波を打つ。

ツクシシャクナゲは、花弁が7裂で波を打つ。

東山本店

東山本店

熊本県指定天然記念物 兜梅に白梅が香る

 今年の花は特に香りが強く漂い、正面に立つだけで圧倒される気配を感じます。高温・長雨・強光さらに停滞水による根腐れに耐え抜いた疲れも感じさせないで開花しています。花に感謝、木には尊敬です!
兜梅は500年以上も前から天草の歴史を刻み、悲しみの物語を背負った老梅です。それらの逆境にも負けず、今年も綺麗な花を咲かせてくれました。接木で後継樹を作り、原木(親木)が樹勢回復する手助けになるようにしています。
 兜梅との出会いは22年前の治療(写真-1)で熊本大学名誉教授の今江正知先生と熊本県庁OBの岩永恭三先輩の紹介です。6月末になっても新芽が無く枯死寸前でしたので、とにかく兜梅の樹勢を回復させ、天草の歴史を変えないことを肝に銘じて一生懸命に治療したこと想い出しました。樹木医として遣り甲斐のある大きな仕事の一つになりました。

令和4年2月26日

令和4年2月26日

延慶寺住職の永田彰さん

延慶寺住職の永田彰さん


2000年 6月28日の兜梅の新葉が出ない状態(写真-1)

2000年 6月28日の兜梅の新葉が出ない状態(写真-1)

藤崎台のクスノキ群は生き残れるか?

1. 藤崎台のクスノキ群  国指定天然記念物 幹周12m(調査時は昭和49年)

1954年撮影(写真-1)

1954年撮影(写真-1)

2022年2月撮影(写真-2)

2022年2月撮影(写真-2)

昭和35年の熊本国体の会場の一つとして藤崎台球場を造成するために、既存の建物・基礎コンクリート、宿舎や余分な土などの建設廃材・残土を処分するためクスノキ群の根元(写真-1)に覆土し、さらにそれらを空洞部に詰め込んでいました。違法な造成工事ですね! 今なら逮捕です。主幹が腐朽しました。
 盛土して60年後(写真-2)の樹勢衰退したクスノキは枝枯れが発生。担当した樹木医達はファイトプラズマ病と診断して抗生物質を樹幹注入しましたが、今だに樹勢回復できず枯れが酷くなり落下枝もある等、場内は立ち入り禁止になっています。熊本県体育保健課・文化課・指定管理者に診断と治療をお願いしていますが・・・。熊本の貴重な天然記念物が枯れて行くのを黙って診ることは避けたい。このクスノキ群7本の衰退化を止めるには、覆土した物を除去・搬出し根系の活性化を促すことが樹勢回復につながります。永年の盛土で二段根が発生しており、養生管理等で天然記念物の生死が決まります。このクスノキは複数の人災の可能性も否定できません。令和3年8月に雨風で大枝が折れたのは、巨樹の神様からの警告かもしれませんね? 1日も早く樹勢回復できますように祈ります。

合掌

熊本の桜標本木に異変!?

 熊本市立古町小学校の桜標本木(写真-1)は、2019年1月に指定解除になりました。当初から10年間の予定で古町小の桜を指定したそうですが、元標本木が瘤病(写真-2、-3)に罹りベッコウタケ(写真-4)が発生して衰弱しています。治療は施して貰いかったので残念です!

写真-1

写真-1

写真-2

写真-2


写真-3

写真-3

写真-4

写真-4


 桜の標本木は、2017年に熊本気象台のソメイヨシノに指定変更されましたが、その標本木は深植えされており元気がありません(写真-5)。変更した2019年から開花が他県の桜より2日~5日遅く咲いています(表-1)。何か異変を感じますね!

ソメイヨシノの開花日 気象台発表より(表-1)

熊本 福岡 佐賀 大分 長崎
2017年 4月1日 3月25日 3月30日 4月4日 3月30日
2018年 3月17日 3月19日 3月20日 3月23日 3月17日
2019年・変更 3月26日 3月21日 3月23日 3月24日 3月20日
2020年 3月23日 3月21日 3月23日 3月25日 3月24日
2021年 3月17日 3月12日 3月17日 3月18日 3月14日

写真-5 標本木(ソメイヨシノ)

写真-5 標本木(ソメイヨシノ)

写真-6 サトザクラ(関山)

写真-6 サトザクラ(関山)


 熊本気象台の桜標本木だけでなく、周辺のイチョウ・サトザクラ・モミジなどまでも根系障害(深植え)で弱っています。深植えされた桜の根は呼吸が困難になり花芽への水分供給が低下して標本木の開花が今までよりも数日は遅くなります。これは人災でサクラが原因ではありません。

※ 瘤病治療後の経過観察
 熊本市中央区のソメイヨシノ罹病木  令和3年2月切り詰め剪定しました。新梢や枝に瘤病 の発生はまだ確認されていません。観察中です。

第19回 サクラ保全管理講座(樹木医CPD認定プログラム)

主催 公益財団法人日本花の会
後援 一般社団法人日本樹木医会

 令和3年11月25日に、国民会館(大阪)で第19回サクラ保全管理講座が行われました。コロナ禍での開催ですから、出席者が少なかったのですがリモートでの参加が150名以上と聞かされ、桜に関するスキルを高めたい人々が全国に多いことに驚きました。講師の先生や花の会のスタッフに感謝です。吉野山保勝会と地域の取り組みというタイトルで、福井良盟氏の講話がありました。西行の歌「ねがわくば花のしたにて春しなんそのきさらぎの望月のころ」をめぐっては、神戸大学名誉教授 木下資一氏のお話があり、樹木医の中村裕三氏は「地域のサクラを護り、育て、伝える」という演題で、成功したり失敗した例を詳しく説明していただきました。

 翌日の桜アドバイザー会議は、コロナ禍で中止でしたが、2022全国さくらシンポジウムin岩国は山口県岩国市で開催されます。岩国城から望む岩国川、それに架けられた錦帯橋は感動です!! 山口県指定天然記念物「向島のカンザクラ」も迎えてくれます。この桜はヤマザクラとカンヒザクラの交雑種といわれており、樹高9m・幹周2.8m・枝張りは18m・樹齢110年です。

(公財)吉野山保勝会と地域の取り組み 福井良盟氏

(公財)吉野山保勝会と地域の取り組み 福井良盟氏

吉野山の桜満開

吉野山の桜満開

「地域のサクラを護り、育て、伝える」樹木医中村裕三氏

「地域のサクラを護り、育て、伝える」樹木医中村裕三氏

大阪城(国民会館9Fから)

大阪城(国民会館9Fから)

大阪城の外堀ソメイヨシノ 紅葉が綺麗

大阪城の外堀ソメイヨシノ 紅葉が綺麗

外堀の桜並木

外堀の桜並木

豊國神社・豊臣秀吉像

豊國神社・豊臣秀吉像

大神神社・鳥居前

大神神社・鳥居前

大神神社 拝殿

大神神社 拝殿

ご祈祷させてもらいました。

ご祈祷させてもらいました。

 

熊本県指定天然記念物「栗崎の天神樟」の治療(枯れ木剪定とキイロスズメバチ駆除)

 熊本県宇土市栗崎の菅原神社境内にご神木として祀られています。樹齢約400年、樹高26m、幹周12.5m、枝幅32mの巨樹です。シイ・カシ・孟宗竹などに囲まれて生育しており、大きな下枝・懐枝などが枯れ下がり落下の危険があり立ち入り禁止の状態でした。さらに、枯れ木空洞内にキイロスズメバチが営巣しており危険な作業になりましたが、無事に完了することができました。枯れ木は約5tあり、チップにして堆肥化します。

着手前

ツリークライミングで樹上作業

枯れ木と段取りの確認

空洞部にキイロスズメバチの巣を除去

玉切り作業中

空洞部内に営巣(10段)

枯れ木にオオイタビが密生

枯れ木の着地

防腐剤塗布作業

切断中・切開




防腐剤塗布

枯れ木の玉切り作業




完了

完了

白川小学校のシンボルツリー


 熊本日日新聞の8月8日の朝刊で、「わたしを語る」京都大学名誉教授 山室信一氏がシンボルツリーの白川小の大エノキが生き証人として紹介しています。このエノキは大きな空洞があり倒木の可能性があり危険木として伐採する計画でしたが、校長先生・卒業生の要望があり延命措置をとるように依頼があり、今年の1月に倒木し難いように治療しました。さらに8月10日の朝刊にも子供たちと触れ合っている写真が掲載され、大エノキは白川小のシンボルツリーとして大切にされていると感じられます。その時の記事を添付します。

 現在は腐朽部からコフキタケ(子実体)が発生しているなど治療は継続です。土壌改良して根量を増加して倒木に耐える根力をつくることから養生します。今年の夏は異常な豪雨で記録的なもので、養生管理の仕方は毎日変化しますので、大エノキに寄り添いながらの介護になります。

熊本市の街路樹伐採はいったん中断!!

ケヤキは2本とも伐採

ケヤキは2本とも伐採

イチョウは5/8を伐採

イチョウは5/8を伐採

 

 2路線で502本を伐採する計画で賛成・反対の意見が新聞紙上でも激論されています。5月22日の熊日新聞朝刊で伐採計画が報道されると、6月4日の朝刊で矢加部氏(元熊日記者)が「森の都」原点に返り再考を!の記事が掲載され、伐採の再考を熊本市民から多くの投書が熊日新聞社や市役所に届きました。6月25日の朝刊で、大規模な伐採計画の詳細が報じられた。記事中で、「街路樹伐採は脱炭素社会を目指す時代の流れにも逆行する」との私の考えも掲載されました。6月26日の熊日で街路樹伐採計画は大西市長の英断で「いったん中断された」との報道がありましたが、中断されても街路樹管理・景観・安全性などの問題はまだ残っています。沿線住民や市民の理解と協力が、未来の熊本市が「森の都」か「火の国砂漠」になるかの分岐点に来ています。

 樹木の大気浄化効能は、葉面で二酸化炭素を吸収し酸素を出す光合成を行い、葉中の水分を放出し、葉温調節や根からの養分・水分の吸い上げを行う。同時にSO₂、NO₂等のガス状の大気汚染物質も吸収します。このように樹木(葉)は毎日環境汚染を減らすために頑張っており、蒸散作用でビル街の温度を下げる役目も兼ねています。自然のクーラーです!!
単木の葉面積当たりの年間総CO₂吸収量は1m²当たり3.5kgCO₂/m²で、イチョウ(胸高直径50㎝)では木全体の葉面積が推定1000m²なので、これを掛ければ3500kgと推測されます(参考・大気浄化植樹マニュアル 平成15年改訂)。つまり、このイチョウ1本を伐採することで年間約3500kgのCO₂等が吸収されず、脱炭素社会を目指す時代の流れに逆行することを理解していただきたい。樹木は炭素を固定しており、それを伐採して焼却すれば炭素が放出されて温暖化を助長するからです。

 さらに伐採計画の樹木たちは、ヒートアイランド現象が現れやすい高温帯に植栽され、蒸散作用や緑被効果で気象緩和も期待される。市街地の街路樹は、防音・防火効果もあり、緑に対する安心感・季節感などの心理的効果も演出しています。危険樹木以外で、人間の都合で健康な街路樹を伐採してはいけない。グリーンフアーストの精神で、「森の都」熊本を再生したいのが私の原点(動機)です。

国指定天然記念物「下城の大イチョウ」が蘇った!!

 阿蘇郡小国町の国天「下城の大イチョウ」が近年にない旺盛な生育を見せています。葉は青々と茂り、数も多く密に成長して輝いています。小国町教育委員会は、今までの管理方法を見直して養生しています。先月は施肥、今月は潅水等について勉強し、乾燥・高温・強光による水ストレスを防ぐことで、葉緑素を守り秋の黄葉を期待しています。梅雨明けからの潅水で「黄葉の質」が決まります。今年の秋は特に楽しみです!


「下城の大イチョウ」から農免道を西へ3Km行った所に「北河内の毘沙門天の榧木」があります。樹高35m・幹周約5.6mの巨樹で、県内で最大級の大きさです。

小国町指定天然記念物「北河内毘沙門天の榧木」

小国町指定天然記念物「北河内毘沙門天の榧木」

小国町指定天然記念物「北河内毘沙門天の榧木」

小国町指定天然記念物「北河内毘沙門天の榧木」