樹木医ブログ
ど根性のカタルパ花が満開です!
熊本市中央区大江地区を流れる大井出川の石垣から生育しているカタルパ(アメリカキササゲ)という珍しい木があります。現在、満開の花を咲かせて香りが漂っています。このカタルパは樹高10m、幹周2.3mで樹齢は約120年と推測。この地は熊本女学校(1887年創立)の跡地と伝えられ、明治30年(1897年)に竹崎順子女史が校長に就任たときに、義兄の徳富一敬(徳富蘇峰・蘆花の父)が自宅で育てたカタルパ苗(新島譲から頂いた種子の苗)を教育の記念樹として植樹したのではないかと私は考えています。この木と徳富記念館のカタルパはDNA鑑定の結果、同じ祖先であることが判りました。さらに戦争火災や昭和28年の大水害、河川工事、台風などの多くの災害からも耐えて生き延びた強運の樹木で、ど根性のカタルパさんです。コロナ禍で苦しみ耐えている人も多いと思いますが、このカタルパさんに負けないように頑張りましょう!
カスミザクラの自生南限地は無事でした!
令和2年7月の人吉球磨地区の豪雨による大災害でカスミザクラの自生地の植生状況を確認するために相良村の許可を受け、産業振興課長さん他3人が同行して調査に行きました。5月1日現在では、村道の一部が崩れて通行止めですから一般の人はまだ通行できませんが、貴重な文化財の状況確認とカスミザクラの自然分布調査が目的です。
今回の調査は、森林総合研究所 九州支所の勝木俊雄(農学博士)氏のカスミザクラ研究の資料づくりとして現地案内をしました。勝木先生は2年前にクマノザクラという桜の新樹種を紀伊伊半島などで発見された研究者で、この発見は国内で100年ぶりの快挙で全国紙でも紹介されました。勝木先生は桜の研究では日本でも第一人者と言われており、カスミザクラの南限地である相良村も併せて紹介していただき人吉球磨地区の発展に少しでも繋がればと考えています。
カスミザクラの標本木は樹勢が旺盛で、周囲の斜面は土砂流失がなく葉量も多く、周囲の杉・ヒノキの伐木のお陰で枝幅も伸び元気に成長しています。開花は例年より半月程度早く咲き花数も多かったそうですが、今は葉桜でした。
5年前の調査より、株は肥大生長しており自然な生態系で獣害(鹿・猪・兎など)は認められず相応の管理が行われています。ただし、植生のクライマックス(極相林にはまだ時間がかかりそうですが、ツブラシイの大径木が枯死していたなど次回調査の項目の一つになります。桜も含めて樹木の自然分布については、球磨地域は未調査地域と言われています。
千原桜は熊本を代表するサトザクラ
千原桜は熊本市立城西小学校に原木の子孫が残っており、約300年前に京都か江戸から持ち込まれた桜ではないかと推測される。ソメイヨシノより少し遅く開花し、一重八重咲の純白の花が1本の枝に着生する品種で、このような咲き方の桜は、墨染桜(菊池)・駒留の桜(菊池)・御車返し等があります。チハラ桜はオオシマ桜の系統品種(サトザクラ)で、花の芳香が強く漂うなど熊本では存在感のある桜です。大輪の白花が開きはじめると緑色の新芽も同時に伸びてそのコントラストが綺麗でより豪華さが目立ちます。樹形は円形で乱れることはなく、天狗巣病や瘤病には罹りにくい性質で、これからの桜品種として期待される桜の一つです。江戸時代の参勤交代の時に、関東から持ち込まれた可能性があります。
上記の桜はオオヤマザクラの巨樹(森林総研の丸山地区)で、戦時中この場所に護国神社の建設予定地でしたが中止になり基礎石などは残っているそうです。この桜は、それ以前に記念樹として植栽されていたのではとの言い伝えがあります。3月15日に撮影した時は花の終わり頃で、この桜は早咲きの系統と思われます。オオヤマザクラは白花で散形花序ですが、ベニバナ種はまだ蕾状態で開花は遅く、樹形も異なり変異株が多い。下記の写真がその系統です。
オオヤマザクラの紅花種で、自社の小国圃場に咲き誇っていたベニヤマザクラです。3月31日に撮影。
ソメイヨシノは天狗巣病に罹りやすいことですが、この陽春(品種名)は天狗巣病に罹りにくい品種として期待され、熊本市内の白川左岸の緑の区間に植栽されています。樹形はあまり横に張らず花数も多くて見栄えも優れ、樹勢が強健で生産しやすい品種です。
森林総研の鑑定で、御衣黄と鬱金はDNA鑑定では同体で枝変わりとされています。熊本市黒髪の宇留毛神社の境内で2本一緒に咲いています。3月31日ころが満開でしたが、撮影時は散り際で花弁に赤筋が出ていました。4月5日。
ご神木が宙を舞う! 巨樹を活かす命の水掛け!!
令和3年に「鵜の木八幡宮」のご神木(高さ30m・幹周4.5m)を移植しました。樹齢300年と云われるムクノキが菊池川の中州に植えられていて、洪水で流される恐れがありますので、地元の要望もあり2月中旬に移植しました。
主幹に大きな腐朽部がありますので、樹体に負荷のかかる普通の移植は危険です。素掘り工法・浅鉢仕様で対応しました。通常であれば総重量が60t~70tですが、移植場所が高台に指定されていますので、ご神木の総重量を20t以下に抑える工夫をして、65tクレーンと70tクレーンの2台で伴吊りしました。
仮設道路から植穴までの距離が15mあり、高低差が8mありますので大型クレーン2台を駆使して吊り上げて安全管理優先の植付けです。土壌改良材はバーク堆肥・ピート・パーライトなどを現場土と混合して排水の状態を確認しながらの植付け作業になりました。
植穴に植樹後は4本のワイヤー地下支柱を設置しました。4月初には小枝に新芽が伸び始めており、根系の発根も順調に生育しています。これからは夏の高温・強光・乾燥をいかにして乗り越えるかが大切で、特に5月の連休後、梅雨明け後、9月10月の乾燥時期を注意して水管理することで、萌芽枝が多く出て「ご神木」としての再生が期待できます。
巨樹の移植工事で最も重要なことは樹体温度が上昇して枯死しないように主幹や葉水への水掛が養生管理の大切な作業の一つです。移植工事は、移すスキルよりも移した後の樹体温度を上げさせない管理が移植工事の成否にかかっていると云っても過言ではありません。この地味な命の水掛けと見守りが「移植工事」の神髄ではないかと私は思います!!
山都町指定天然記念物「元小峰の菩提樹」の倒木保存
樹種 ボダイジュ シナノキ科
形状 高さ20m 幹周5.5m 枝張り 15m
樹齢 約250年 倉岡氏が天明年間に伊勢神宮より持ち帰る。
場所 熊本県上益城郡山都町小峰 地内
総合診断
令和2年に台風余波により主幹中央部の腐朽部から墓地へ倒木し、墓石や樹林に当たり宙に浮いた状態できわめて危険で、伐採切断するにしても墓石を傷めずに撤去することは困難な作業でした。倒木している総重量は推定10t以上と思われますが大型重機車両を搬入するにしても山道で道路が狭く作業困難な場所です。切断(玉切場所により浮いた樹木が反転して墓石を傷めたり、作業員が怪我することも想像できますので、切断はワイヤーを張り支柱で支えるなどの工夫をして安全管理面でも慎重にしました。切り詰め剪定するときに、墓石に大枝が当たる可能性もあり墓石を壊さないように、一部を先に避難させました。結果、作業中に墓石を壊さず人身事故もなく安全に完了しました。
主幹の中央腐朽部から裂けていますが、大きな腐朽部からコフキタケ(腐朽菌)の子実体が10個以上発生しはじめているなど腐朽の進行が外観より内部が早く進行していたことが分かりました。残った主幹は、腐朽がひどくボロボロで原形を留めていないくらい、危険な立ち木です。主幹から徒長枝、萌芽枝も発生していますが北側からの吹上風が強く折木の可能性が高いと思われますので、根元から伐採することが安全と判断しました。最終的には根元の1.0mくらいの高さで切断し、切断面には防腐剤・殺菌剤などを塗布し、母株を保存するとともに根元周辺に群生しているヒコバエの生育を見守ることが重要と考えています。
菩提樹は生長が速い樹種の一つですが、腐朽菌に弱くコフキタケの発生が多く見られたのは、内部腐朽の進行が早く北風の吹上げが強いので倒木したと考えられます。
これからの管理養生としては、今回の作業で倒木の心配はなくなり安全管理については限りなく低下したと思います。問題はヒコバエの群生を間引きしながら5本~10本程度にまで間引きする管理を継続し、文化財としての価値を守ることです。これからの管理は特別な養生をすることはなく、関係者で見守ることが必要です。
水前寺公園・出水神社に「三鈷の松」!
水前寺公園に「三鈷の松」が何故誕生したのか、主な原因は不明です。それらの可能性としては、年2回の剪定(緑摘み・古葉もみあげ)の影響で新梢にストレスがおこり、部分的に『先祖帰り』で二葉が三葉に変態した可能性が高いと私は考えていますが、疑問も残ります。それに水前寺公園に植栽されている松類は、アイグロマツ・アカマツが多く、それらはクロマツと比べて樹勢が少し弱く形質や遺伝的に剪定などの影響を受け易い樹種です。さらに異常気象(乾燥・高温・強光)や熊本地震など、生育環境の悪影響も原因の一つかもしれません。それらが相乗的に作用して、新梢の下部に三葉が発生した可能性も考えられます。「先祖帰り」とは、厳しい環境下で樹体が対応する変化です。例えば、カイヅカイブキで強い剪定後に杉葉が出ます。イチョウは火事・衰退などで葉がラッパ状に一部がなり、樹齢・環境と共に葉は変身することも報告されています。松の新梢にストレスが貯まり、二葉の一部が三葉に変化したと考えるのが自然かもしれません。三葉の出る松類は、テーダーマツ・ダイオウマツ・ハクショウ等がありますが葉身が長く外国原産の別種です。
いつごろから水前寺公園に「三鈷の松」が誕生したのかは謎ですが、これこそ「神のみぞ知る」ですね。弘法大師と縁のある「三鈷の松」が熊本にも存在していることは大変うれしい事です。この三葉を持つことで運気が上がり幸運が訪れると云われています。熊本の新しいパワースポットの誕生で、新型コロナ退散を念じて!
カタルパ(菱形小学校)の養生作業と卒業記念
御神木(ムクノキ巨樹)の移植タイミング
樹種 ムクノキ Aphananthe aspera ニレ科 ムクノキ属
形態 高さ15m 幹周4.5m 枝張り30m 主幹が下流側に傾いています。
場所 熊本県菊池市片角 菊池川中州
樹齢 300年以上 1740年代の大洪水で主幹が斜めになり、くの字形になった。
樹勢 樹勢は不良(衰弱化)で根元に開口部があり根系が露出し、直根がなく浅根性に変態化しており、台風で倒木や洪水で流失の恐れがあります。
説明会 令和2年12月23日に菊池市片角区の片角公民館で説明会を開催。片角区長・氏子さんら約20名が参加された。このムクノキは「鵜の木八幡宮」の御神木で、毎年8月にお祀りされています。工期は令和3年1月20日~2月10日で、右岸の河川敷に移設予定です。御神木の総重量は推定60tですが、今のままでは樹体や根系への負担が大きく安全に吊り上げ移動することはできません。そのために御神木が再生できる極限の状態(軽量化)に修正して、樹体を傷めずに移植する方法等の説明をしました。65tクレーンで吊り上げる巨樹(幹周4.5m)は県内最大級の大きさで、加えて主幹が傾き大きな腐朽部もあるなど難度が極めて高い移植工事です。移植後の見守り(養生)で、ご神木の生死が決定しますので3年間は経過観察を続ける予定です。
菊池川で大洪水が発生すれば、御神木は流される可能性があります。樹勢は衰退化しており枝枯れ下りが診られるなど植栽基盤の改良が必要で、移植するタイミングとしては良い判断時期です。工事安全祈願は来年1月中ごろに行い、後継樹も育成する計画です。
ムクノキ巨樹でドラゴンボール発見!!
熊本県菊池市片角の菊池川中州に自生していたムクノキ巨樹(幹周4.5m・樹齢300年)を御神木として移植したいと県からの要望があり9月に調査診断しました。その時にムクノキ巨樹の根元には空洞がありその中に「丸い石」がありました。直径15㎝くらいの玉石ですが、周囲の川原石とはまったく異なり、角がなく丸くなっていて、ドラゴンボールみたいになっています。根元の空洞部に包まれており、水流により磨かれたようにも考えられます。菊池には龍の伝説が古くからあり、上流には龍門があり玉石と何かの縁(関係)があるかもしれませんね? 不思議なパワーを感じます!