兜梅の再生剪定

 3月3日(開花後)に能子樹木医と一緒に、剪定などの樹勢回復作業に延慶寺さんに出張しました。考えていたよりも兜梅は枯れ枝が多く発生しており、それだけ根腐れ(後遺症)が深刻だったことが判りました。そこには天草地方の植栽基盤を改良する困難さがあります。さらに環境悪化による新梢の生育に異常があり天狗巣病(?)みたいな捻じれ枝が多数発生しており、診断以上に衰弱していることに気づかされました。雨水排水は良好で安心しましたが、停滞水が発生しないように再度のエア-スコップ作業です。
 今の兜梅は根力が弱く細根量が少ないので強剪定・切詰め剪定は控え、青軸芽を少し残して根量を増やすことを優先です。新芽が元気に伸びて葉量を確保して樹勢回復へと繋がるように細心の観察をします。剪定後は切り口に殺菌剤塗布、全体にベンレ-ト水和剤・コ-テイング剤を散布して今日は終了です。

枝抜きと枯れ枝剪定(写真-1)

枝抜きと枯れ枝剪定(写真-1)

剪定後 (写真-2)

剪定後 (写真-2)

エア-スコップ作業(写真-3)

エア-スコップ作業(写真-3)

殺菌剤塗布(写真-4)

殺菌剤塗布(写真-4)

緑育してます!

 1月14日は、熊本市教育委員会による学校緑化コンク-ルの相談員として助言をしました。桜木中学・健軍小学校などの5校を巡り樹木診断をしましたが、担当先生の熱意は高く楽しい一日でした。
 2月12日は、午前は芳野小学校、午後は北部中学校で授業しました。

写真-1

写真-1

写真-2

写真-2


 熊本市立芳野小学校での桜の授業風景です(写真-1)。「学び舎の桜を救おう」というプロゼクトが今年で9年目になります。1922年にソメイヨシノが移植されています(熊本県内では最古)が、子供たちによるクイズで盛り上がりました(写真-2)。

写真-3

写真-3

写真-4

写真-4


 熊本市立北部中学校での緑の授業風景で、緑化委員会での活動状況です。「寂心さんの樟」苗を移植したものが大きく成長しました(写真-4)が温暖化対策の一つであることを共有しました。さらに命を繋ぐ行動にも教え甲斐があります。日本一美しいクスノキ「寂心さんの樟」のように育ってもらいたい。

 グランドに河津桜が咲き誇りメジロが蜜を吸いに来ていました。もう春ですね。

記念樹のヒマラヤ桜を救おう!

「国際環境都市会議くまもと2002年」を記念して、高円宮殿下・妃殿下がお手植えされた熊本市民会館前のヒマラヤ桜がピンチです。数年前から樹勢が衰退し、枝枯れが目立ちます(写真-1・2)。ヒマラヤ桜は常緑(写真-3)で日本の桜(落葉)の先祖とも云われており、大気浄化の機能が高く街路樹としても活用されています。開花時期は12月初に薄紅~白一重の可愛い花(写真-4)で、熊本では葉を出しながら咲き始めます。「サクラマチくまもと」を支える常緑桜の1本です。迷惑な『害路樹』にならないためにも!

令和2年1月21日 新葉 (写真-1)

令和2年1月21日 新葉 (写真-1)

枝枯れ(写真-2)

枝枯れ(写真-2)




常緑(写真-3)

常緑(写真-3)

令和元年12月10日の開花(写真-4)

令和元年12月10日の開花(写真-4)

「兜梅」開花しました!


治療中ですが、「兜梅」の花が咲き始めました。根力がまだ弱いので例年より花が小さく花色に艶がありません。開花終了後、剪定して強い新芽を促して根系が発育するように努めます。来年は素晴らしい花が咲き誇るように「兜梅」さんに聞きながらの樹勢回復がスタートしました。

天草宝島の「兜梅」再復元と梅実エレジー

令和2年1月6日

 県指定「兜梅」は、2000年6月に枯死寸前まで衰退しましたが、土壌改良(盛り土除去)・葉面散布・接木などの治療により復元することができました(HPの施工例)。ところが2018年~2019年になり、植栽基盤(粘土質)の排水不良などが原因で再び衰弱し、加えて杉の根進入による新たな障害などが重なり、多数の枝枯れが発生しました(写真-1)。夏場の高温・乾燥・強光から「兜梅」を守るために早急に寒冷紗を張り(写真-2)、葉面潅水して夏を越しました。粘土層の硬度は山中式で「35」を計測(写真-3)。この数値は根系発育が困難な値です。暗渠排水の掘削中に停滞水が流入(写真-4)するような状態でしたがコルゲ-ト管で雨水層に集めてポンプアップして域外に排出しています。治療は土壌改良(暗渠排水工・エアースコップ)・葉面散布(活力剤)・杉根除去(写真-5)・乳酸菌混入などです。土壌分析では、EC値が低くて肥効がなく、有効態リン酸は欠乏、交換性塩基(石灰・苦土・加里)のバランスが崩れている土壌です。幹にはオオイタビカヅラが巻き付き、枝には蘚苔類が着生していたので除去(写真-6)しました。
老々介護の始まりですが、元気に回復していく様子を楽しみながらの治療です。

写真-1 着手前

写真-1 着手前

写真-2 寒冷紗設置

写真-2 寒冷紗設置

写真-3 深さ40㎝で硬度計は35

写真-3 深さ40㎝で硬度計は35

写真-4 暗渠排水管の掘削で停滞水が流入

写真-4 暗渠排水管の掘削で停滞水が流入

写真-5 杉の根系除去

写真-5 杉の根系除去

写真-6 洗浄後オオイタビを除去

写真-6 洗浄後オオイタビを除去

中国では、娘が嫁ぐときに梅苗を持たせ、実を成らせて妊娠時の食用にさせていたそうです。梅は、奈良時代前に薬木・鑑賞用として日本に持ち込まれ、 梅実は薬用(梅干など)として栽培・収穫されていました。「兜梅」の開花時期は2月初旬で、花色は濃い白で大輪の一重咲きで、花弁は厚みがあります。司馬遼太郎も感激するほど美しい「老梅」ですが悲しい天草伝説(エレジー)があります。それは天草合戦(1589年)で、木山弾正の妻「お京さん」が20人位の騎馬隊で突入する際に、この梅の枝に兜を取られ、女性であることが判り討ち死にしました。「お京さん」の辞世の句が「花は咲けども実は成らせまじ」です。事件後に梅実は成りません。なぜ梅の木を伐らないで、梅の実にこだわるのか? それは「兜梅」の梅実は品種改良(豊後系)された大粒で貴重な薬木と考えられ、その重要な役目を阻止する「実は成らさせない」ことで怨念を晴らしたのではないか。樹齢500年の「兜梅」は、それらの苦難を乗り越えて現在もなお“天草の宝物”として生き続けています。

八代の宝「臥龍梅」の復元へ! 

令和元年12月20日

 1640年ごろに細川忠興公が「八代から百花の魁となる人材出でよ」と念じて植えた樹令400年の老梅です。 11月に 復元工事は無事完了しましたが、これからの養生管理次第で樹勢が回復するのか、衰退するのかの大事な時期に来ています。養生管理で大切なことは、細根を増やして根力を強くすることが重要で、このことが樹勢回復へと繋がります。さらに土壌改良・腐朽部処理・日照不足・透水性・メタセコイア根の進入根切断・病害虫防除などの年間管理へと続き、元気になっていく姿を愉しみながらの老々介護になります。

 梅は中国原産で薬木・観賞用として渡来しましたが、野梅は一重の白花小輪です。臥龍梅は淡紅色の八重咲で、開花時期は3月頃になり遅咲きです。果実は5月下旬に大玉が成ります。開花後に樹勢を診ながらの軽剪定になりますが、2年~3年後に根力が強くなれば強剪定する計画です。腐朽部のウレタン補填はしないで防腐剤を塗布するだけのありのままの老樹の姿を維持できるようにします。道路や参道からも臥龍梅が見やすくなり、歴史を感じさせる老梅を復元でき八代市民の多くの人々にも観賞していただきたい。

 樹勢衰退した主な原因は、排水不良(停滞水)・土壌固結(玉砂利敷き詰め)・土壌硝酸態の不足・日照不足・風通し悪化・メタセコイア根の障害などではないかと考えています。臥龍梅は植樹後380年が経過して、環境変化によく耐えて生き延びてきたなと感心しています。養生管理のバトンは確かに受け継ぎました!

樹木医5期会 研修会

令和元年12月7日~8日

 樹木医5期会は、平成7年度に初めて実施された樹木医(農林水産大臣認定)試験に合格した者達です。毎年、集合して情報交換してスキルを高めるような努力をしています。今回は国忠氏の幹事で研修しました。次回は広島です。



尾所の桜(岡山県指定) 樹齢500年 ヤマザクラ

津山城のソメイヨシノ 樹齢110年

津山城のソメイヨシノ 樹齢110年

不定根の誘導(ビニールパイプ)の一例

不定根の誘導(ビニールパイプ)の一例



醍醐の桜(国指定) 樹齢1000年 エドヒガン

醍醐の桜(国指定) 樹齢1000年 エドヒガン

土壌改良工・エアースコップ

土壌改良工・エアースコップ

 溝口氏(広島)・柳井氏(島根)・国忠氏(岡山)と今村の5期生4人の勉強会です。運よく原田氏(樹木医)が醍醐の桜を治療されていたので見学しました。伝説のある桜で、1000年の時代を生きてきた勇姿に感動し、パワーを頂きました。

令和元年度 九州地区樹木医講演会(西日本短期大学5F)

令和元年11月30日

講演次第

1.樹木医はなにを求められているか       会長 小河誠司氏
2.「大分県の名樹」発刊と有効活用に向けて   支部長 田邉 勇氏
3.サクラの種類、及びその管理上の特徴について 多摩森林科学園 勝木俊雄氏
4.さくら咲く 人で咲く            日本花の会  和田博幸氏
5.パネルデイスカッション           西日本短大教授 宮島淳二氏



クマノザクラとツクシヤマザクラはこれからの有望株かもしれない。勝木氏
桜と人を育てることで、地域の桜が健全に末永く守られる。和田氏



パネルデイスカッションはこれからの樹木医の方向性を示した。 宮島氏

第17回 サクラ保全管理講座

公益財団法人 日本花の会

2019年11月26日 大阪市中央区大手前  国民会館12F



講師とテーマ
① 「桜の図譜の見方と楽しみ方」  小笠原左衛門尉亮軒 氏
② 「桜の名木の組織培養における種の保存とそれを活用した事業展開」
住友林業  中村健太郎 氏
③ 地元の樹木医から見たクマノザクラの発見・調査そして未来」
樹木医甚兵衛  矢倉寛之 氏

第15回 桜の名所づくりアドバイザー会議   11月27日 国民会館12F
今年1年間の活動報告を、16名で検討しました。

今村順次(熊本)

今村順次(熊本)

黒坂 登(秋田)

黒坂 登(秋田)

親子で「緑育」しています。

令和元年11月8日

熊本市立大江小学校で、台風で倒木した「大エノキ」の命を繋ぐ講話を依頼されました。小学3年生は実物の「大エノキ」を見ていませんが、根元にはクローン苗が3mに生長しており、命のリレーは継続されています。クローン苗を植栽された想いを低学年にも感じてもらうためです。

11月8日 体育館にて

11月8日 体育館にて


芳野小学校の生徒達は熊本地震で被災した阿蘇西小学校へ「100年桜」を寄贈するために,積極的に接木講習会を受けています。感心します。

2月14日 学校実習場にて

2月14日 学校実習場にて

九州測量専門学校 5月~9月まで

九州測量専門学校 5月~9月まで

熊本市立北部中学校

熊本市立北部中学校