2019年 熊本の桜開花日に異変?

 平成31年2月15日に、熊本気象台から古町小学校へ突然の桜標本木の変更通知には驚きでした。当初は5年間の観測予定で、ここ3年間の古町小と合同庁舎前の標本木の開花日の差は殆どなかったので変更したとの理由です。とすれば病気に罹り弱った桜(古町小)と新しい桜標本木(合同庁舎)の開花日の相違がないならば樹勢も衰退していると考えられます。これもまた心配ですね。標本木で5個の花が開けば、開花宣言です。そのことだけ:に注目し、標本木の健康度はあまり関心がなかったのではないか?
 熊本気象台から変更されて残された古町小の元桜標本木は、熊本市教育委員会や古町小学校などが自費で病気治療するみたいです。古町小の元標本木は2本あり、本当にお疲れ様でした。感謝します!! しかし子供たちは残念に思っているようです・・・。

 新しい標本木を見に行きました!! やはり衰退しはじめていました・・・。


 平成31年2月16日 合同庁舎前の桜標本木(2本) 樹形に乱れあり。

 新しい標本木の衰退原因の一つは、植栽時の深植え(盛り土)状態で生育しており、少し樹勢の衰退が診られます。古町小学校と開花日が殆ど変わらなかったというのも納得できます。若木としての樹形はマアマアですが少し小枝などは湾曲しています。早期発見ですから早めの治療で健全な標本木に回復させることは可能です。熊本のさくら開花宣言は、胸を張って公表できるようにしたいものです。今のままの状態では、1日遅れの開花宣言になると思われます。

 気象庁の皆さんに、全国のさくら標本木の品質(健康度)を検証されることを提案します。

熊本市学校緑化コンクール相談部門

 熊本市でのソメイヨシノの標本木が、古町小学校に2本あります。相談部門での依頼でしたが、標本木が「こぶ病」に罹病していました。小枝に発病しているのは、山桜から感染した「こぶ病」の可能性があります。防除が困難な病気の一つです。

ソメイヨシノ標本木(古町小)

ソメイヨシノ標本木(古町小)

こぶ病(ウイルス性?)

こぶ病(ウイルス性?)

チハラザクラ(城西小)

チハラザクラ(城西小)

コフキタケ(山東小) 伐採予定

コフキタケ(山東小) 伐採予定

 チハラザクラの原木は3年前の台風で倒木して枯死しました。チハラザクラは300年前以上に京都か関東から、何かの事情で持ち込まれたと考えられます。一枝に白花の一重、二重、八重咲きが開花する珍しいサト桜(オオシマ桜系)です。ソメイヨシノより3日~5日程度遅く花が開きます。

「北部中緑化活動推進講座」

「北部中緑化活動推進講座」

平成31年1月30日

平成31年1月30日

 北部中学校緑化委員会(約60名)、北部中教職員(10名)の勉強会の講師を親子樹木医で務めさせていただきました。「寂心さんの樟」の地元であり、熱心な質問に感心しました。樹木の名前を覚えることからスタートです。

県指定「臥龍梅」がピンチ

 平成31年1月20日の熊本日日新聞に掲載されました。熊本大学名誉教授・内野氏、熊本県文化課、八代市、松井葵之氏、松濱軒事務局長、臥龍梅保存会、TKUテレビ、FM八代、熊本日日新聞、など多くの人が集り、経過報告と樹勢衰退の原因を説明しました。これからの治療についての意見交換をして行政などとの話し合いは不可欠です。

 私は、所有者の松井さんの依頼により、平成22年頃から診断調査してきましたが、「臥龍梅」は国指定や県指定の規制がありますので治療までの工程はまだまだ時間が必要でした。今日の会合で1歩前進したことは確かですが、樹勢は衰弱しており枯死寸前の状態で、根力を強くする早急な対応をするつもりです。周囲に生垣が植栽されて見通しも悪化しており、さらにウレタンや鉄筋が老樹に付着しており美観上も見苦しいなどの問題もありますので、樹勢回復にはしっかりと対策を練ります。

平成31年1月18日 現在

平成31年1月18日 現在

平成31年1月18日 現在

平成31年1月18日 現在

平成23年3月 開花状況 過去

平成23年3月 開花状況 過去

平成24年5月 結実状況 過去

平成24年5月 結実状況 過去

県天「寂心さんの樟」 神様の木に会う~にっぽん巨樹の旅~

 平成31年1月1日の22時00分から2時間、NHK BS4Kで、次回は1月4日の21時30分から2時間、NHK BSプレミアムで、放送されました。1月5日の15時20分から2時間、NHKワールド・プレミアム(日本語版)で放送され、国際放送もされる予定だそうです。
 番組内容は、山高神代桜・北金ヶ沢のイチョウ・蒲生の大楠・寂心さんの樟・縄文杉・志々島の大楠・和池の大カツラ・善福寺のイチョウ・岩屋の大杉など多くの巨樹が紹介され、それぞれが1本の物語りとして興味深い文化的な作品になっており感動しました!! 「寂心さんの樟」では、日本で一番美しい巨樹として紹介されました。参拝者の一人で杉本フクノ(94歳)さんの人生を通して、興味深く取材されており神様にお祈りされている様子が丁寧に撮影されています。私は夏の日に、熱中症対策で根元に潅水して樹体温度を下げている状況を「樹木医 今村順次」という肩書きで映されました。
 北海道では倉本聡さんの絵画されている様子を紹介、さらに水木しげる先生の想い出で話は「バオバブ巨樹は道路を挟んで地下を潜って根で握手して会話しているのだ」とのお話は樹木医の心に響く言葉でした。

① NHK BS4K 1月1日22時~24時
② NHK BSプレミアム 1月4日21時30分~23時30分
③ NHK NHKワールドプレミアム(日本語版)
④ その他国際放送も予定されています

熊本県文化懇話会・熊本県文化協会の月刊誌

熊本県文化懇話会・熊本県文化協会の月刊誌(平成30年12月1日)に県天の「寂心さんの樟」を紹介した文章が掲載されました。


環境文化部会の勉強会が12月1日(土)に現代美術館の会議室で開催され、地震や大水害の心得を教えていただきました。
演題は 「ペット同伴避難所の開設」徳田竜之介先生
「白川の治水対策」 立野ダム工事事務所長 鵜木和博氏

徳田竜之介氏

徳田竜之介氏

鵜木和博氏

鵜木和博氏

① 避難者はペットが介在することで強く生きることができます。熊本地震では、支援物資は集まってもそれを被災者の手元に届ける手段が欠けていたようだ。
② 立野ダムは異常気象による集中豪雨の水量を調整します。平成24年の水害には白川整備のパラペット(堤防)で洪水を防ぐことができました。地元の樹木から種子を採集して育成した樹木を植栽しています。

徳田・鵜木先生による講演会は、現場の声を聞けて勉強になりました。感謝!

「首かけイチョウ」は樹木医の原点!!

日比谷公園内(松本楼の前)に「首かけイチョウ」があります。この名前の由来は道路拡張でこの木が伐採されそうになり、設計していた本多静六(林学博士)氏が自分の首を賭けて移植され、イチョウの命を守ったことが名前の由来になっています。本多先生がイチョウを守った勇気は樹木医が見習うべきことです。日比谷公園には学生時代に何回も来ていますので、とても懐かしい場所でした。

永青文庫(文京区目白1-1-1)で、江戸時代の楽しい一句を発見しました。

花見での一句です

楽しみは 花の下より 鼻の下 (仙厓和尚)

第16回サクラ保全管理講座(東京)
平成30年11月7日(水) 13:00~17:30まで
日比谷図書文化館 B1F

小笠原左衛門尉亮軒 氏

小笠原左衛門尉亮軒 氏

花壇綱目(1681年・水野元勝著)

花壇綱目(1681年・水野元勝著)

弘前公園のソメイヨシノ(樹齢140年)

弘前公園のソメイヨシノ(樹齢140年)

樹木医 橋場真紀子氏

樹木医 橋場真紀子氏

第14回桜の名所づくりアドバイザー会議
平成30年11月8日(木) 9:00~13:00まで
東京都港区赤坂2-3-6 コマツビル2階 第4会議室

黒坂登氏(秋田県)

黒坂登氏(秋田県)

鶴田誠氏(兵庫県)

鶴田誠氏(兵庫県)

高階道子氏(宮城県)

高階道子氏(宮城県)

松枝章氏(石川県)

松枝章氏(石川県)

13名の桜の名所づくりアドバイザーが集合して、各地での活動報告をしました。台風で倒木した桜が接木部分からの腐朽に一因があり、実生台木と挿し木台木との関連についての検討会もしました。不定根については時間が足りず持ち越しです。来年は大阪での開催ですが、そのときに再会を約束して解散で有意義な会議でした。

国指定特別天然記念物「蒲生の大楠」での現場研修会

九州地区樹木医講演会が、平成30年10月26日に鹿児島市で開催されました。翌日は、仙巌園・蒲生の大楠での研修会で約30名が参加。日頃の行いが良いのか?天気も晴れで桜島を背景にして楽しく研修できました。

「蒲生の大楠」の全景

「蒲生の大楠」の全景

根元状況・幹周24.22m

根元状況・幹周24.22m

根元空洞部への入り口

根元空洞部への入り口

空洞部の内部(調査用の足場)

空洞部の内部(調査用の足場)

蒲生の大楠では、特別な許可を受けて根元周辺の立ち入り禁止区域や空洞部内に入らせていただき内部の様子を見学できました。内部は腐朽部の状態などを観察するために足場用として設置されていました。姶良市教育委員会・地元樹木医さんの説明もあり有意義な研修を受けました。大変お世話になり、ありがとうございました。本当に感謝です!!

仙巌園・尚古集成館も見学しました。
ヤクタネゴヨウ(マツ科)は、屋久島・種子島に分布している珍しい樹木です。
先月に、老樹は腐朽率70%の理由から伐採されました。これは建物を守るために仕方がなかったそうです。切断面から樹脂が多量に出るのも特徴の一つです。ナタオレノキ・バクチノキ・ショウベンノキは分類学上の正式名称です。

ヤクタネゴヨウの若木(樹齢20年)

ヤクタネゴヨウの若木(樹齢20年)

伐採された古株(推定樹齢300年)

伐採された古株(推定樹齢300年)

ナタオレノキ(モクセイ科)

ナタオレノキ(モクセイ科)

バクチノキ(バラ科)

バクチノキ(バラ科)

ショウベンノキ(ミツバウツギ科)

ショウベンノキ(ミツバウツギ科)

仙巌園の菊まつり・篤姫様の籠?

仙巌園の菊まつり・篤姫様の籠?

桜の授業(学び舎の桜を救おう!)

熊本市立芳野小学校 10月12日

よしの百年桜の経緯のお話(今村能子樹木医)

よしの百年桜の経緯のお話(今村能子樹木医)

運動場で芽接します。

運動場で芽接します。

樹齢100年のソメイヨシノ

樹齢100年のソメイヨシノ

100本の苗に芽接しました。

100本の苗に芽接しました。

今年は益城町の小学校に寄贈される予定で、熊本地震による被害小学校を励ます取り組みです。

紅白花は縁起が良い・シロゴンズイとゴンズイ 熊本県阿蘇郡西原村

阿蘇神社さんと「高砂の松」の縁(えにし)は1000年前から!!

 平成20年、阿蘇神社さんから「高砂の松(写真-1)」が衰弱したので元気にできないかとの相談がありました。根元の低木類・石等を撤去し、土壌改良して養生後10年が経過して、ようやく樹勢が回復してきました(写真-2)。「高砂の松」の後継樹を育てるために高砂神社(兵庫県)さんから「高砂の松」の苗を再譲渡してもらいました。その苗が大きくなるまで弊社圃場(熊本市)でコンテナ育成し(写真―3)、その後平成26年に樹高2mになり本殿境内に植樹しました。現在は、樹高4m近くにまで熊本地震にも負けずに成長(写真-4)しています。
 阿蘇神社さんと高砂神社さんは古来より縁(えにし)があり「神木いぶき」と「高砂の松」として大切に保護されています。
 これらの由来は、阿蘇の神主友成が上京途中に高砂の浦に立ち寄り、友成が杖を突き挿したところ発芽して成長したという伝説があります。それが現在の「神木いぶき」で推定樹齢1000年と言われており、この縁で「高砂の松(国指定天然記念物)」の苗が贈られたそうです。阿蘇神社さんと高砂神社さんとの縁は約1000年前遡ります。「高砂の松」は縁結びと夫婦和合のパワースポットとして参拝されています。

2009年2月4日(写真-1)

2009年2月4日(写真-1)

2018年8月30日(写真-2)

2018年8月30日(写真-2)


2009年2月5日(写真-3)

2009年2月5日(写真-3)

2018年8月30日(写真-4)

2018年8月30日(写真-4)

大津菊陽杉並木(豊後街道)のスギ枝に黄金斑入りを発見!!

この「枝変わり」は杉並木では大変珍しく、スギ葉の突然変異と思われます。スギの斑入り園芸品種では、メジロスギ・セッカンスギなどがありますが、この黄金斑は固定していませんので消滅の恐れがあります(菊陽町原水)。何かの良い前兆であれば嬉しいですね!

屋久杉伝説を少し検証しましょう!!

推定樹齢250年以上のスギ(初代菊陽太郎)が倒木して、保存育種のために挿し木したのが二代目菊陽太郎(写真-1)という後継樹です。この菊陽太郎はスギの変種でアシウスギ (Cryptomeria japonica var.radicans)の系統ではないかと私は考えています。この変種の特徴は葉の開く角度が狭く(写真-2)、手で触ってもチカチカしない、伐採されても萌芽力が強く再生が早いこと等です。別名はウラスギとも呼ばれています。

二代目 菊陽太郎 写真-1

二代目 菊陽太郎 写真-1

二代目の針葉の状況・写真-2

二代目の針葉の状況・写真-2

屋久杉(写真-3)は実生の地方品種で、若木の葉の開く角度が広い(写真-4)ので、トゲがありチカチカして痛いのも屋久杉の特徴です。これは屋久鹿・屋久猿からの防御として進化したと云われています。遺伝解析は森林総研九州で行われるそうですから、結果を楽しみにしています。さらに健軍神社の参道並木も屋久杉ではないと考えています。

屋久杉の実生苗・写真-3

屋久杉の実生苗・写真-3

針葉(トゲ)の状況・写真-4

針葉(トゲ)の状況・写真-4

菊陽太郎と国指定天然記念物「手野のスギ」は血縁関係あり!!

2014年に、菊陽太郎と手野のスギをDNA鑑定(葉緑体の塩基配列の比較)して、血縁関係があることが判りました。推定樹齢2000年と云われる国造神社の「手野のスギ」と菊陽太郎はアシウスギ系統で、葉を触っても痛くありません。仮説ですが、大津菊陽杉並木は「手野のスギ」の子孫の可能性も否定できません。国造神社は豊後街道沿い(阿蘇市手野)にあり、樹高60m・幹周12mの県下最大のスギでした。

元国指定天然記念物「手野の大杉」の挿し木苗

元国指定天然記念物「手野の大杉」の挿し木苗

針葉の状況・写真-5

針葉の状況・写真-5

国造神社「手野の大杉」 幹保存

国造神社「手野の大杉」 幹保存

根系を保存

根系を保存