樹木医ブログ
阿蘇北側復旧ルートの車帰水源「水神木」移植その後
阿蘇北側復旧ルートの二重峠トンネル阿蘇口に車帰水源があり、そこに樹齢約300年のヤマモミジ(幹周2.8mの巨樹)が水神さんの木として祀られていました。その大切な水神木が北側復旧ルートの支障木になりましたので離れた場所に移植を依頼され、2017年に移植(総重量18t)が完了し、さらに3年間の養生管理も継続できることになり現在は樹勢も回復しています。阿蘇北側復旧ルートは令和2年10月4日から一般開通し、阿蘇観光の大きな起爆剤として期待されています。移植された水神木(写真-1)は二重峠トンネルの車帰出口の北側で見守っており、阿蘇北側復旧ルートの開通はコロナ禍での最も嬉しいニュースの一つになりました。水神木さんが引っ越ししていただいたお蔭です。車帰水源も無事でおいしい水が流れています、無事に竣工でき感謝ですね! まもなく霜が降りれば紅葉が美しく車帰水源池に映えて、歓迎されるでしょう。
赤斑葉枯病の治療例(その2)
立田山ヤエクチナシで白川左岸(緑の区間)を癒しの場に!
立田山ヤエクチナシを浅井東一先生が発見されて100年目を記念しての植栽で、国交省熊本河川国道事務所(白川出張所)の全面的な協力で完成しました。自生地での立田山ヤエクチナシは日照不足等で消滅した可能性があります。挿し木繁殖した苗(DNA保存木)で緑地帯を造り、絶滅しかかった立田山ヤエクチナシが国指定天然記念物であることを考え、「熊本ふるさとの樹木」として貴重な樹種であることを共に学んでほしい場所にしたい。
明午橋の橋詰に立田山ヤエクチナシ(泰勝寺系)だけで合計400本余りを群植しており、自生していた立田山(国指定天然記念物)を背景にして、熊本大学理学部も眺められる場所に植えさせていただきました。今年の開花時期には間に合いませんでしたが、しっかりと養生管理して来年は立派な純白の花が咲くように心がけしています。さらに芳香も白川の流れに沿って漂うと思えば心が癒されます。熊本市民の憩いの場としての「緑の区間」が立田山ヤエクチナシの植栽で楽しみが又一つ増えたと考えています。「緑の区間」を指導していただいた熊本大学の星野先生・増山先生には感謝しています。
白川小学校の大エノキは生き残れるか!
今村樹木医の挑戦
熊本市立白川小学校のシンボルツリ-の大エノキが伐採の危機に瀕しています。樹高20m・幹周4.0m・枝幅15mの巨樹で、樹齢は約150年と云われています。主幹には開口部が複数あり、大きな空洞部では筒抜けになっている場所もあり腐朽率は60%以上と推定されます。現状のままでは強風で倒木の可能性が高いと診断される危険木です。さらに石のサークルで根元を囲い、盛り土状態で支持根が発達していないのも気がかりです。シンボルツリ-でなければ、伐採は当然かもしれません。1945年7月の熊本大空襲で焼け残ったエノキの貴重な1本でもあり、歴史の生き証人をどうしても助けたいのです!!
地上部の台風・倒木対策として、切り詰め剪定・ワイヤ-ロ-プ巻・幹巻・蒸散抑制剤散布などの作業をしました。
落葉後に土壌改良、養生管理を実施しながら支持根の強化を図り、自分の力で倒木しないような強い根系を目指します。児童会も水かけ、声掛けで応援してもらいたい。
令和2年8月24日~25日
「一心行の大桜」つながるプロゼクト
令和2年8月21日 中松小 6年生
阿蘇郡南阿蘇村立中松小学校は今年度で廃校になります。地域にある「一心行の大桜」を接ぎ木(芽接ぎ)して6年生(13名)がそれを管理して移転先の新白水小学校へ持っていく計画です。さらに宮城県東松島市立鳴瀬桜華小学校(新設)からの要望もあり接ぎ木苗(写真-7)を寄贈することになりました。 中松小学校は熊本地震、鳴瀬桜華小学校は東日本大震災という大きな災害を両校は経験しましたが、助け合いながら交流を深めて復興を目指してきました。来春に中松小の6年生が鳴瀬桜華小へ「一心行の大桜」苗を贈り、復興のシンボルツリ-として応援の絆を強くします。桜つながるプロゼクトの第2弾です。
このプロゼクトは所有者のご協力で実施されています。感謝です!
カシノナガキクイムシ
ミズナラ(コナラ雑種)の被害木で、カシノナガキクイムシからのマスアタック(集中攻撃)されて枯死しています。根元に落ちたフラス(樹紛)は異様な臭いがしています。樹高20m・幹周2.8m・枝幅20mの大径木(写真-1・2・3)などが犠牲になり、原因としてカシノナガキクイムシが「カビ菌」を運び枯死につながったとされています。この夏は県内各地で枯れが目立ちます。
写真は立田山(標高157.7m)での出来事ですが、被害樹種はツブラジイ、コナラ・アラカシなどの大径木に加害して枯死させています。さらに国指定の阿蘇北向谷原始林(標高200m~500m)にも被害が発生しており防除も困難で、発生が止まらず拡大している状況です。
ヒメシロダモ Neoltsea sericea Koidz form premature Okuyama
天草市での公園管理講習会
菱形小学校のカタルパを元気に!
農林水産大臣認定 第316号
樹木医 今村順次
樹種 カタルパ(アメリカキササゲ)
樹齢 約100年
形状 樹高25m・幹周3.70m・枝幅30m
調査日 令和2年6月25日(木)
総合診断
令和2年の開花時期が少し遅く、花の大きさも以前の花と比較して小さくなっています。樹勢の衰退化が診られ、原因としては、根元周辺の土壌緊密化による根系の成長不良によるものと考えられます。葉も小さくなり、花数も少なく、樹冠に枯れ枝があります。取り急ぎ、実施すべきは台風による倒木(枝折れ)対策が最優先と考えられます。下枝は切り詰め剪定で、バランス良く剪定し切り口には殺菌剤・人工樹皮を塗布します。
落葉期に根元周辺(グランド)の土壌改良して空気の供給を増やし、根量の増加で、樹勢の回復を目指します。 6月25日に幹周を測定したところ3m70㎝でしたから、2014年に計測した3m53㎝より17㎝大きくなっていました。巨樹の記録更新ですね。
以上