カシノナガキクイムシ

 ミズナラ(コナラ雑種)の被害木で、カシノナガキクイムシからのマスアタック(集中攻撃)されて枯死しています。根元に落ちたフラス(樹紛)は異様な臭いがしています。樹高20m・幹周2.8m・枝幅20mの大径木(写真-1・2・3)などが犠牲になり、原因としてカシノナガキクイムシが「カビ菌」を運び枯死につながったとされています。この夏は県内各地で枯れが目立ちます。
 写真は立田山(標高157.7m)での出来事ですが、被害樹種はツブラジイ、コナラ・アラカシなどの大径木に加害して枯死させています。さらに国指定の阿蘇北向谷原始林(標高200m~500m)にも被害が発生しており防除も困難で、発生が止まらず拡大している状況です。

穿孔痕・ミズナラ(写真-1)

穿孔痕・ミズナラ(写真-1)

フラス(樹紛)の堆積(写真-2)

フラス(樹紛)の堆積(写真-2)

ミズナラの枯死(立田山)写真-3

ミズナラの枯死(立田山)写真-3

ツブラジイとアラカシ(立田山)

ツブラジイとアラカシ(立田山)

ヒメシロダモ Neoltsea sericea Koidz form premature Okuyama

採集日    令和2年8月2日(日)

熊本市北区龍田陳内2丁目の立田山で発見しました。シロダモの横に自生しており、高さ15m・幹周1.0mの大径木で、シロダモの葉よりも小さく広披針形で丸味があり結実数が多い特徴があります。有用樹木図説(林弥栄著1969年)によれば、本州(関東中部、近畿、中国)九州に分布しており、小木でも開花結実するもの。 葉柄は3㎝くらい、葉身は10~15㎝、葉幅は4~5㎝で葉色はシロダモよりも暗緑色で葉裏は白い。ヒメシロダモについては、鑑定中ですからご存じの方はご教授をお願いします。

ヒメシロダモ

ヒメシロダモ

シロダモ

シロダモ

ヒメシロダモは生長が遅く矮性気味。

ヒメシロダモは生長が遅く矮性気味。

シロダモは生長が速く、大葉。

シロダモは生長が速く、大葉。

天草市での公園管理講習会

令和2年6月30日                今村順次と今村能子

 大雨の中ですが、20名くらいの人が集まり「殉教公園」の維持管理などのお話をさせていただきました。公園管理に熱心な人が多く、施肥時期・蘚苔類の除去方法・病害虫の駆除・ヒノキバヤドリの切除方法・珍しい樹種の名前(コバノチョウセンエノキ、ランシンボク、モクマオウ)などが植栽されていました。この後、「広瀬公園」で樹勢衰退のソメイヨシノの管理などの説明をしました。

園内観察

園内観察

園内観察

園内観察

ヤブツバキに寄生しているヒノキバヤドリギ

ヤブツバキに寄生しているヒノキバヤドリギ

モクマオウの大径木

モクマオウの大径木

菱形小学校のカタルパを元気に!

農林水産大臣認定 第316号
樹木医 今村順次

樹種  カタルパ(アメリカキササゲ)
樹齢  約100年
形状  樹高25m・幹周3.70m・枝幅30m
調査日  令和2年6月25日(木)

全景

全景

根本

根本

根本周辺

根本周辺

下枝

下枝

総合診断
令和2年の開花時期が少し遅く、花の大きさも以前の花と比較して小さくなっています。樹勢の衰退化が診られ、原因としては、根元周辺の土壌緊密化による根系の成長不良によるものと考えられます。葉も小さくなり、花数も少なく、樹冠に枯れ枝があります。取り急ぎ、実施すべきは台風による倒木(枝折れ)対策が最優先と考えられます。下枝は切り詰め剪定で、バランス良く剪定し切り口には殺菌剤・人工樹皮を塗布します。
落葉期に根元周辺(グランド)の土壌改良して空気の供給を増やし、根量の増加で、樹勢の回復を目指します。 6月25日に幹周を測定したところ3m70㎝でしたから、2014年に計測した3m53㎝より17㎝大きくなっていました。巨樹の記録更新ですね。

以上

立田山ヤエクチナシの100周年記念植樹

立田山ヤエクチナシが浅井東一先生により発見されて今年で100周年です。その偉業を称えて3月28日に熊本大学理学部構内に10本記念植樹しました。このコンテナ苗は、泰勝寺クチナシの挿し木苗で6月末~7月初に開花予定です。
自生地で消滅した主な原因は日照不足ではないかと考えています。美人薄命はクチナシにも当てはまるようです。

熊本大学理学部構内 10本 3月28日

熊本大学理学部構内 10本 3月28日

花芽が形成されています。5月29日

花芽が形成されています。5月29日




農薬散布後 6月10日

農薬散布後 6月10日

泰勝寺の天然記念物(日照不足で衰退

泰勝寺の天然記念物(日照不足で衰退




拝聖院のクチナシ(早咲き)

拝聖院のクチナシ(早咲き)

遅咲きのヤエクチナシ

遅咲きのヤエクチナシ

クスベニヒラタカスミカメの成虫を発見!

 5月19日に熊本市中央区大江の白川左岸で低木クスノキから確認し、2匹採集しました。5月連休時までは、高木のクスノキ新葉には加害痕跡は発見できませんでしたが・・・。今年の初見です。

採集したクスノキ(写真-1)

採集したクスノキ(写真-1)

被害葉(表)写真-2

被害葉(表)写真-2



 新葉の吸汁痕に炭疸菌(コロニー様態)が発生して黒斑(写真-2)が出ています。採集したカメムシはビニール袋に入れて観察しています。新葉はデリケ-トで、吸汁痕に発生した炭疽病の影響でストレスを感じて落葉(7月頃に)することになります。クスクダアザミウマ(6月)・クスオオアブラムシ(新芽青軸)より早く発生して加害していますので、従来の病害虫の発生パタ-ンとは異なります。クスノキ街路樹が害路樹と呼ばれる前に対策を考えましょう。
被害葉(裏)

被害葉(裏)

クスベニヒラタカスミカメ

クスベニヒラタカスミカメ

臥龍梅の樹勢回復(新葉の管理)について


 4月8日に花後のバランス剪定し、4月25日に新葉が伸びてきています。

葉面散布前(去年より大きい

葉面散布前(去年より大きい

葉面散布後(白液はアビオンC)

葉面散布後(白液はアビオンC)


 5月8日の観察では新葉がさらに大きくなり、根系の発育生長も期待できます。葉面散布はバイオビリオン(500倍)・アビオンC(500倍)・ベンレート(2000倍)等の混合液を散布しています。5月下旬には土壌散布などで、根系の強化を計画しています。樹皮が荒れている幹、ウレタンを除去した部分にはワックス剤・保護剤を散布していますが緑化テープで幹巻する準備もしています。今年の夏が樹勢回復の大きな山場になります。

池尻の唐笠松 (熊本県指定天然記念物・山都町)

4月22日(晴れで強風)

 アカマツの巨樹で、推定樹齢300年以上・樹高13m、幹周3.5mで枝幅が30mの樹形できれいな編み笠状態の一本松です。普通のアカマツは樹高が枝幅より大きいのですが、本種は樹高より枝幅の方が大きいのが特徴です。町の依頼で2010年頃から養生管理の指導をさせてもらっていますが、地元の協力・理解を得てマツノマダラカミキリに被害を受けないように必死に維持管理しています。唐笠松の生育場所が良くなく、頂部では植栽基盤が薄く(30㎝前後)、支持根が横に張り出る状態なので強い風向きによっては倒木の恐れもありますので、今回は根力の強化を目指すためにエアースコップによる土壌改良を実施しました。マツノザイセンチュウ病についてはネマバスタ-潅水で対応しています。アブラムシなどの吸汁性昆虫にはアドマイヤ-を散粒し、すす病などの2次感染を防ぎます。地元(上川井野区)からは毎回多数の人々が集合していただき感謝しています。

南西斜面の下から

南西斜面の下から

丘の上に集合

丘の上に集合

作業前の打ち合わせ(説明)

作業前の打ち合わせ(説明)

堅い基盤を壊すエアースコップ

堅い基盤を壊すエアースコップ

 5月にマツノマダラカミキリの予防として、殺虫剤(エコワン3フロアブル)・植物活力剤・調整剤などを散布計画しています。シロアリ蟻道も確認しましたので駆除も予定しています。根系バランスが不均衡なので経過観察は継続し、常に根力の強化を目指します。

一心行の大桜」休園中の治療について

 新型コロナウイルスの感染防止の一環で公園は閉鎖中ですが、所有者の依頼により南阿蘇村役場から特別な許可をいただき入園しました。桜類は開花前後に治療の適期があります。観光客が居ないので、エアースコップで土壌改良・診断を行いたかったのですが雨天で中止しました。コフキタケ等の腐朽菌処理は国天然記念物「麻生原のキンモクセイ」で駆除した実績があります。気温13℃から18℃になればダニ・アブラムシが動き回るので殺虫剤を散粒し、地温14℃になれば、根系が発育しますので油粕を施肥するなどタイムリーな作業があります。枯れ枝も昨年より多くなり樹勢の衰退が止まりません。
 この衰退の原因の一つに、根元南側の段差を無くすために盛り土した結果が現在の衰弱を招いたのではないかと考えています。経過観察が必要ですが、花香が漂いはじめていたのが唯一の癒しでした。

全景(東側)

全景(東側)

開花状況(3月26日)2分咲き

開花状況(3月26日)2分咲き

コフキタケ

コフキタケ

子実体(きのこ)除去作業中

子実体(きのこ)除去作業中

コフキタケ断面

コフキタケ断面

殺菌剤・防腐剤塗布

殺菌剤・防腐剤塗布

殺菌剤散粒オルトラン等6Kg

殺菌剤散粒オルトラン等6Kg

発酵油粕(5-5-1)散布20Kg

発酵油粕(5-5-1)散布20Kg

萌芽枝の剪定

萌芽枝の剪定

園内の河津桜に幼果菌核病が大発生!

園内の河津桜に幼果菌核病が大発生!

 幼果菌核病については、南阿蘇地域の全域に発生していますので役場の担当者に病名・薬剤名と散布回数などの報告はしましたが、完治が困難な病気の一つです。

熊本県指定天然記念物「将軍木」

 将軍木はムクノキ(樹齢650年・幹周8.0m)で、菊池市隈府の菊池高校正門の御所通りに植えられています。南北朝時代に征西将軍懐良親王のお手植えの木と云われ、台風・交通事故などにも負けずに元気にご神木として生育しています。今年は菊池武光公(菊池一族15代)の生誕700周年になり記念すべき年でもあります。健全な生育をしています。

 主幹上部からの下り枝が通行障害になっていますので、その剪定除去と着生しているキヅタの切断を3月下旬に計画しています。