樹木医ブログ
熊本県指定天然記念物 池尻の唐笠松
熊本県山都町の池尻の唐笠松(樹高8.5m・幹周3.8m・枝幅20m)の通常管理が今年も始まりました。昨年は、すす病や赤斑葉枯病に罹り少し衰退していましたが、それを集中的に治療しましたので今年は、葉色も良くて新芽も多く伸びて安心しています。6月にカミキリムシの防除散布をします。立地場所が斜面で根系状態が良いとは言えず、根量増加の対策が樹勢回復のキーポイントになっていると考えています。簡単な土壌改良では効果が高くないので、継続しての管理と地元の協力がこれからも必要です。今年度で養生しはじめて18年目の管理です。以前は、電撃による松枯れ防止工法を採用されていました。電気によるマツノザイセンチュウの生育を防止する方法でした。現在では、電撃治療は殆んどされていません。
ヨドガワツツジの伝説
チョウセンヤマツツジは対馬(九州)、朝鮮半島に自生しており紅紫色の一重咲きで、その雄蕊が弁化したものをヨドガワツツジ(R・var.yedoense)と云われています(写真-1)。半落葉の低木で4月末に開花(南小国町)し、ボタンツツジとも呼ばれ葉は細長い披針形で葉脈が浮き上がっており(写真-2)、日本へは15世紀頃に渡来したと云われ、チョウセンヤマツツジの変種として登録されています。
ところで九州地方では、ヨドガワと呼ばれていたツツジ群がありました。これは100年位前に、関西の淀川沿いで自生していたツツジ(モチツツジ)を植木市に出荷する時に産地名でヨドガワと名付けていましたので、それから大輪で紅花系統のツツジをヨドガワと呼ぶようになったそうです。現在では、ヨドガワという名前は消滅して、「大輪で園芸的価値の高いもの」をヒラドツツジ(オオムラサキ・ケラマツツジ・キシツツジ・リュウキュウツツジ・モチツツジなど)と呼ぶようになっています。ヒラドツツジという名称は昭和30年代に国立久留米園芸試験場(久留米市)の田村輝夫博士が平戸島のツツジ群を調査したところ多くの品種が誕生しており、それらを総称として名付けられたそうです。
丁字桜を探して、雁俣山へ登山
熊本県指定天然記念物 兜梅に白梅が香る
今年の花は特に香りが強く漂い、正面に立つだけで圧倒される気配を感じます。高温・長雨・強光さらに停滞水による根腐れに耐え抜いた疲れも感じさせないで開花しています。花に感謝、木には尊敬です!
兜梅は500年以上も前から天草の歴史を刻み、悲しみの物語を背負った老梅です。それらの逆境にも負けず、今年も綺麗な花を咲かせてくれました。接木で後継樹を作り、原木(親木)が樹勢回復する手助けになるようにしています。
兜梅との出会いは22年前の治療(写真-1)で熊本大学名誉教授の今江正知先生と熊本県庁OBの岩永恭三先輩の紹介です。6月末になっても新芽が無く枯死寸前でしたので、とにかく兜梅の樹勢を回復させ、天草の歴史を変えないことを肝に銘じて一生懸命に治療したこと想い出しました。樹木医として遣り甲斐のある大きな仕事の一つになりました。


藤崎台のクスノキ群は生き残れるか?
1. 藤崎台のクスノキ群 国指定天然記念物 幹周12m(調査時は昭和49年)
昭和35年の熊本国体の会場の一つとして藤崎台球場を造成するために、既存の建物・基礎コンクリート、宿舎や余分な土などの建設廃材・残土を処分するためクスノキ群の根元(写真-1)に覆土し、さらにそれらを空洞部に詰め込んでいました。違法な造成工事ですね! 今なら逮捕です。主幹が腐朽しました。
盛土して60年後(写真-2)の樹勢衰退したクスノキは枝枯れが発生。担当した樹木医達はファイトプラズマ病と診断して抗生物質を樹幹注入しましたが、今だに樹勢回復できず枯れが酷くなり落下枝もある等、場内は立ち入り禁止になっています。熊本県体育保健課・文化課・指定管理者に診断と治療をお願いしていますが・・・。熊本の貴重な天然記念物が枯れて行くのを黙って診ることは避けたい。このクスノキ群7本の衰退化を止めるには、覆土した物を除去・搬出し根系の活性化を促すことが樹勢回復につながります。永年の盛土で二段根が発生しており、養生管理等で天然記念物の生死が決まります。このクスノキは複数の人災の可能性も否定できません。令和3年8月に雨風で大枝が折れたのは、巨樹の神様からの警告かもしれませんね? 1日も早く樹勢回復できますように祈ります。
合掌
熊本の桜標本木に異変!?
熊本市立古町小学校の桜標本木(写真-1)は、2019年1月に指定解除になりました。当初から10年間の予定で古町小の桜を指定したそうですが、元標本木が瘤病(写真-2、-3)に罹りベッコウタケ(写真-4)が発生して衰弱しています。治療は施して貰いかったので残念です!
桜の標本木は、2017年に熊本気象台のソメイヨシノに指定変更されましたが、その標本木は深植えされており元気がありません(写真-5)。変更した2019年から開花が他県の桜より2日~5日遅く咲いています(表-1)。何か異変を感じますね!
ソメイヨシノの開花日 気象台発表より(表-1)
| 熊本 | 福岡 | 佐賀 | 大分 | 長崎 | |
| 2017年 | 4月1日 | 3月25日 | 3月30日 | 4月4日 | 3月30日 |
| 2018年 | 3月17日 | 3月19日 | 3月20日 | 3月23日 | 3月17日 |
| 2019年・変更 | 3月26日 | 3月21日 | 3月23日 | 3月24日 | 3月20日 |
| 2020年 | 3月23日 | 3月21日 | 3月23日 | 3月25日 | 3月24日 |
| 2021年 | 3月17日 | 3月12日 | 3月17日 | 3月18日 | 3月14日 |
熊本気象台の桜標本木だけでなく、周辺のイチョウ・サトザクラ・モミジなどまでも根系障害(深植え)で弱っています。深植えされた桜の根は呼吸が困難になり花芽への水分供給が低下して標本木の開花が今までよりも数日は遅くなります。これは人災でサクラが原因ではありません。
※ 瘤病治療後の経過観察
熊本市中央区のソメイヨシノ罹病木 令和3年2月切り詰め剪定しました。新梢や枝に瘤病 の発生はまだ確認されていません。観察中です。


第19回 サクラ保全管理講座(樹木医CPD認定プログラム)
主催 公益財団法人日本花の会
後援 一般社団法人日本樹木医会
令和3年11月25日に、国民会館(大阪)で第19回サクラ保全管理講座が行われました。コロナ禍での開催ですから、出席者が少なかったのですがリモートでの参加が150名以上と聞かされ、桜に関するスキルを高めたい人々が全国に多いことに驚きました。講師の先生や花の会のスタッフに感謝です。吉野山保勝会と地域の取り組みというタイトルで、福井良盟氏の講話がありました。西行の歌「ねがわくば花のしたにて春しなんそのきさらぎの望月のころ」をめぐっては、神戸大学名誉教授 木下資一氏のお話があり、樹木医の中村裕三氏は「地域のサクラを護り、育て、伝える」という演題で、成功したり失敗した例を詳しく説明していただきました。
翌日の桜アドバイザー会議は、コロナ禍で中止でしたが、2022全国さくらシンポジウムin岩国は山口県岩国市で開催されます。岩国城から望む岩国川、それに架けられた錦帯橋は感動です!! 山口県指定天然記念物「向島のカンザクラ」も迎えてくれます。この桜はヤマザクラとカンヒザクラの交雑種といわれており、樹高9m・幹周2.8m・枝張りは18m・樹齢110年です。
熊本県指定天然記念物「栗崎の天神樟」の治療(枯れ木剪定とキイロスズメバチ駆除)
熊本県宇土市栗崎の菅原神社境内にご神木として祀られています。樹齢約400年、樹高26m、幹周12.5m、枝幅32mの巨樹です。シイ・カシ・孟宗竹などに囲まれて生育しており、大きな下枝・懐枝などが枯れ下がり落下の危険があり立ち入り禁止の状態でした。さらに、枯れ木空洞内にキイロスズメバチが営巣しており危険な作業になりましたが、無事に完了することができました。枯れ木は約5tあり、チップにして堆肥化します。
白川小学校のシンボルツリー
熊本日日新聞の8月8日の朝刊で、「わたしを語る」京都大学名誉教授 山室信一氏がシンボルツリーの白川小の大エノキが生き証人として紹介しています。このエノキは大きな空洞があり倒木の可能性があり危険木として伐採する計画でしたが、校長先生・卒業生の要望があり延命措置をとるように依頼があり、今年の1月に倒木し難いように治療しました。さらに8月10日の朝刊にも子供たちと触れ合っている写真が掲載され、大エノキは白川小のシンボルツリーとして大切にされていると感じられます。その時の記事を添付します。
現在は腐朽部からコフキタケ(子実体)が発生しているなど治療は継続です。土壌改良して根量を増加して倒木に耐える根力をつくることから養生します。今年の夏は異常な豪雨で記録的なもので、養生管理の仕方は毎日変化しますので、大エノキに寄り添いながらの介護になります。



































































