「寂心さんの樟」樹冠・健康診断です!
熊本県文化財委員で熊本大学理学部の副島顕子教授から高所(45m)からの樹冠診断をしたいとのことでした。25tクレーン車でゴンドラを吊り、安全帯ハーネスを装着して。熱帯地方での植物調査では高さ70mまで登っていますとのことで、どおりで慣れておられます。落着きが違いますね。
熊本地震前に盛り土を除去し、その後の樹勢回復の経過観察です。頂部は枯れ枝が一部あり水分が来ていない枝もありますが、全体的に回復傾向です。
熊本県文化財委員で熊本大学理学部の副島顕子教授から高所(45m)からの樹冠診断をしたいとのことでした。25tクレーン車でゴンドラを吊り、安全帯ハーネスを装着して。熱帯地方での植物調査では高さ70mまで登っていますとのことで、どおりで慣れておられます。落着きが違いますね。
熊本地震前に盛り土を除去し、その後の樹勢回復の経過観察です。頂部は枯れ枝が一部あり水分が来ていない枝もありますが、全体的に回復傾向です。
樹木治療研究会 樹木医 今村順次
令和4年4月27日の朝に、熊本市中央区渡鹿の産業道路に植栽されていたチハラザクラ(樹齢40年・樹高15m・幹周170㎝)が強風と豪雨(100mm)の影響で根返り倒木しました。チハラザクラはオオシマザクラ系統の園芸的価値の高い品種でサトザクラに含まれます。樹勢が強く葉は大きく繁りますので風圧を受けやすく、主幹が強いので緑樹帯では根返り倒木する桜です。花は白花で一重・八重咲で豪華な桜で、ソメイヨシノの開花後に咲き始め熊本の地域(ローカル)桜として有名です。
根返り倒木した桜の植樹帯の面積は、長さ5.0m幅1.0m程度で、根系の生育限界を超えて盛り上がっています。主な倒木原因として、歩道側に汚水管などの埋設物、電柱、バス停が設置され、桜の支持根を切断した可能性があり根返り倒木した素因の一つです。さらに切断面から腐朽菌が侵入して根系を腐らせる子実体(きのこ)が発生していますので支持力が低下しています。ベッコウタケは幹に発生する場合が多いのですが、今回は幹ではなく、切断された根系等に発生しています。桜類は浅根性ですから根元周辺の根系切断後は樹勢が衰弱し、風圧に対する抵抗力が弱体して根返りの可能性が高くなるのです。
伐採された倒木の切断面には腐朽部(空洞)がありませんでしたが(写真2)、根株やヒラドツツジ根系にベッコウタケ・マンネンタケ(写真4.5.6)が発生しています。桜は陽樹ですから車道側の日向や空間に伸びる樹形になり、全体の重心が道路側に傾いており根返りとしては自然な方向に倒れたと思います。
5月12日夜に、熊本市中央区土木センターは診断(打音と空洞部の有無)の結果だけで、2本の伐採を追加しました。危険木(空洞部)であれば伐採は当然ですが、伐採された主幹には空洞(腐朽部)がありませんので切りつめ剪定で安全性を確保できたかもしれません。診断方法や対策が間違っていたと私は考えています。危険木かどうかの診断が適正かどうかは第3者を交えて専門家で検証し、守るべき桜樹は守り大切に保存したいものです。産業道路沿いのチハラザクラ街路樹が開花すれば日本一の最も豪華な桜並木と自慢できるので、なるべく伐採しない管理をお願いします。遠慮なく桜の専門家に相談してください。
管理案
ヒラドツツジの根元に発生しているベッコウタケ・コフキタケ・マンネンタケなどの腐朽菌(子実体)を除去し、腐朽菌の温床(写真5.6)にならないように清掃します。したがって桜の根元周辺のヒラドツツジは移植か伐採して撤去し、同時に腐朽菌の発生元(未分解物)も搬出します。チハラザクラ等で道路側にはみ出している枝葉(写真3)は切り詰め剪定し、歩道側を含めた全体のバランスを見て剪定をします。桜の根元周辺を掘削することは断根になり倒木を招く要因にもなりますので極力禁止です。今回のチハラザクラの倒木は腐朽部(空洞)からの幹折れではなく、根返りと思われますので枝抜きと切り詰め剪定を併用して風当りを減少させる管理も必要です。剪定後の切断面の養生や枯れ枝剪定などの定期管理は安全管理上でも重要です。大きな枯れ枝が残っっていますので車・人に落下して重大事故が発生する可能性もあります。幹や枝に腐朽菌の幼菌が着生していますので、剥離して殺菌剤・人工樹皮をして塗布し防除します。産業道路にはチハラザクラだけではなく、ソメイヨシノ、ヤエザクラも混合植栽されていますので、チハラザクラに統一していただければ景観面でも優れた道路になると思います。
※ 倒木には、大きく分けて幹折れ(空洞・腐朽部)と根返りがあります。今回の倒木は根返り倒木の可能性が高いと考えられます。チハラザクラは樹勢が旺盛で主幹が健康です。葉量が多く風当りが強くなり根系への回転圧力(モーメント)が大きくなり根返りしたと考えられます。
3月24日・25日
チョウセンヤマツツジは対馬(九州)、朝鮮半島に自生しており紅紫色の一重咲きで、その雄蕊が弁化したものをヨドガワツツジ(R・var.yedoense)と云われています(写真-1)。半落葉の低木で4月末に開花(南小国町)し、ボタンツツジとも呼ばれ葉は細長い披針形で葉脈が浮き上がっており(写真-2)、日本へは15世紀頃に渡来したと云われ、チョウセンヤマツツジの変種として登録されています。
ところで九州地方では、ヨドガワと呼ばれていたツツジ群がありました。これは100年位前に、関西の淀川沿いで自生していたツツジ(モチツツジ)を植木市に出荷する時に産地名でヨドガワと名付けていましたので、それから大輪で紅花系統のツツジをヨドガワと呼ぶようになったそうです。現在では、ヨドガワという名前は消滅して、「大輪で園芸的価値の高いもの」をヒラドツツジ(オオムラサキ・ケラマツツジ・キシツツジ・リュウキュウツツジ・モチツツジなど)と呼ぶようになっています。ヒラドツツジという名称は昭和30年代に国立久留米園芸試験場(久留米市)の田村輝夫博士が平戸島のツツジ群を調査したところ多くの品種が誕生しており、それらを総称として名付けられたそうです。
今年の花は特に香りが強く漂い、正面に立つだけで圧倒される気配を感じます。高温・長雨・強光さらに停滞水による根腐れに耐え抜いた疲れも感じさせないで開花しています。花に感謝、木には尊敬です!
兜梅は500年以上も前から天草の歴史を刻み、悲しみの物語を背負った老梅です。それらの逆境にも負けず、今年も綺麗な花を咲かせてくれました。接木で後継樹を作り、原木(親木)が樹勢回復する手助けになるようにしています。
兜梅との出会いは22年前の治療(写真-1)で熊本大学名誉教授の今江正知先生と熊本県庁OBの岩永恭三先輩の紹介です。6月末になっても新芽が無く枯死寸前でしたので、とにかく兜梅の樹勢を回復させ、天草の歴史を変えないことを肝に銘じて一生懸命に治療したこと想い出しました。樹木医として遣り甲斐のある大きな仕事の一つになりました。
1. 藤崎台のクスノキ群 国指定天然記念物 幹周12m(調査時は昭和49年)
昭和35年の熊本国体の会場の一つとして藤崎台球場を造成するために、既存の建物・基礎コンクリート、宿舎や余分な土などの建設廃材・残土を処分するためクスノキ群の根元(写真-1)に覆土し、さらにそれらを空洞部に詰め込んでいました。違法な造成工事ですね! 今なら逮捕です。主幹が腐朽しました。
盛土して60年後(写真-2)の樹勢衰退したクスノキは枝枯れが発生。担当した樹木医達はファイトプラズマ病と診断して抗生物質を樹幹注入しましたが、今だに樹勢回復できず枯れが酷くなり落下枝もある等、場内は立ち入り禁止になっています。熊本県体育保健課・文化課・指定管理者に診断と治療をお願いしていますが・・・。熊本の貴重な天然記念物が枯れて行くのを黙って診ることは避けたい。このクスノキ群7本の衰退化を止めるには、覆土した物を除去・搬出し根系の活性化を促すことが樹勢回復につながります。永年の盛土で二段根が発生しており、養生管理等で天然記念物の生死が決まります。このクスノキは複数の人災の可能性も否定できません。令和3年8月に雨風で大枝が折れたのは、巨樹の神様からの警告かもしれませんね? 1日も早く樹勢回復できますように祈ります。
合掌
熊本市立古町小学校の桜標本木(写真-1)は、2019年1月に指定解除になりました。当初から10年間の予定で古町小の桜を指定したそうですが、元標本木が瘤病(写真-2、-3)に罹りベッコウタケ(写真-4)が発生して衰弱しています。治療は施して貰いかったので残念です!
熊本 | 福岡 | 佐賀 | 大分 | 長崎 | |
2017年 | 4月1日 | 3月25日 | 3月30日 | 4月4日 | 3月30日 |
2018年 | 3月17日 | 3月19日 | 3月20日 | 3月23日 | 3月17日 |
2019年・変更 | 3月26日 | 3月21日 | 3月23日 | 3月24日 | 3月20日 |
2020年 | 3月23日 | 3月21日 | 3月23日 | 3月25日 | 3月24日 |
2021年 | 3月17日 | 3月12日 | 3月17日 | 3月18日 | 3月14日 |
※ 瘤病治療後の経過観察
熊本市中央区のソメイヨシノ罹病木 令和3年2月切り詰め剪定しました。新梢や枝に瘤病 の発生はまだ確認されていません。観察中です。
主催 公益財団法人日本花の会
後援 一般社団法人日本樹木医会
令和3年11月25日に、国民会館(大阪)で第19回サクラ保全管理講座が行われました。コロナ禍での開催ですから、出席者が少なかったのですがリモートでの参加が150名以上と聞かされ、桜に関するスキルを高めたい人々が全国に多いことに驚きました。講師の先生や花の会のスタッフに感謝です。吉野山保勝会と地域の取り組みというタイトルで、福井良盟氏の講話がありました。西行の歌「ねがわくば花のしたにて春しなんそのきさらぎの望月のころ」をめぐっては、神戸大学名誉教授 木下資一氏のお話があり、樹木医の中村裕三氏は「地域のサクラを護り、育て、伝える」という演題で、成功したり失敗した例を詳しく説明していただきました。
翌日の桜アドバイザー会議は、コロナ禍で中止でしたが、2022全国さくらシンポジウムin岩国は山口県岩国市で開催されます。岩国城から望む岩国川、それに架けられた錦帯橋は感動です!! 山口県指定天然記念物「向島のカンザクラ」も迎えてくれます。この桜はヤマザクラとカンヒザクラの交雑種といわれており、樹高9m・幹周2.8m・枝張りは18m・樹齢110年です。