「桜100選」の市房ダム湖周辺の桜

 熊本県水上村は、市房ダム湖が完成した昭和36年から昭和40年以降にソメイヨシノ等を湖畔に群植して、桜の名所として開花時期には多くの観光客が押し寄せるようになりました。しかしながら植栽後60年が経ち、現在ではソメイヨシノの自然衰退(生育限界)や「テングス病」が多量に罹病しており、さらに山影での日照不足、密植になり下枝が枯れ上がるなど、樹勢が衰弱しはじめており厳しい環境が続いています。これらの原因をひとつずつ時間をかけて改善すれば健全な桜の名所になる可能性が高い。
 テングス病は子のう菌(タフリナ菌)が枝などに感染して、異常な多分枝を発生させる病気で、花芽は殆んどつきません。さらに1本の桜に数十ヵ所発生することもあり(写真-1)、樹勢がどんどん衰弱して枯死枝が多くなり見苦しい樹形になりますので、早めの剪定切除が必要です。村もこの現実を真剣に受け止め、桜の名所復活に取り組んでおられます。

市房ダム

市房ダム

展望所からの村風景

展望所からの村風景

テングス病・写真-1

テングス病・写真-1

テングス病・写真-2

テングス病・写真-2


テングス病の切除(写真-3)

テングス病の切除(写真-3)

テングス病枝の切除(写真-4)

テングス病枝の切除(写真-4)



 市房ダム湖周辺の桜の名所は、「金をかけず時間をかける管理」が相応しいのではと思います。目標として20年、30年後に桜が樹勢回復できるような養生を目指すことが良いのでは? 急がば回れです。そのような説明を地元にしっかり伝えて協力していただくことも、桜の名所つくりの第一段階です。

① 養生についての情報管理を、村・地元・ボランテイア等の関係者で共有します。

② 「テングス病」の切除部分が浅く、再発の可能性が高いので切り詰め剪定をします。剪定や幹などに殺菌剤を場所によっては散布します。

③ 枯れ木、枯れ枝は安全管理のために早めに伐採・剪定します。

④ ソメイヨシノは植えないで、神代曙・小松乙女・陽春・千原桜などのテングス病に罹りにくい品種を植栽します。自生しているヤマザクラ・エドヒガンも活用します。

⑤ 肥料は油粕(骨紛入り)だけとします。

上記の要項を守り、毎年継続して養生することで、桜の名所として復活できると考えています。