熊本県文化懇話会・熊本県文化協会の月刊誌

熊本県文化懇話会・熊本県文化協会の月刊誌(平成30年12月1日)に県天の「寂心さんの樟」を紹介した文章が掲載されました。


環境文化部会の勉強会が12月1日(土)に現代美術館の会議室で開催され、地震や大水害の心得を教えていただきました。
演題は 「ペット同伴避難所の開設」徳田竜之介先生
「白川の治水対策」 立野ダム工事事務所長 鵜木和博氏

徳田竜之介氏

徳田竜之介氏

鵜木和博氏

鵜木和博氏

① 避難者はペットが介在することで強く生きることができます。熊本地震では、支援物資は集まってもそれを被災者の手元に届ける手段が欠けていたようだ。
② 立野ダムは異常気象による集中豪雨の水量を調整します。平成24年の水害には白川整備のパラペット(堤防)で洪水を防ぐことができました。地元の樹木から種子を採集して育成した樹木を植栽しています。

徳田・鵜木先生による講演会は、現場の声を聞けて勉強になりました。感謝!

「首かけイチョウ」は樹木医の原点!!

日比谷公園内(松本楼の前)に「首かけイチョウ」があります。この名前の由来は道路拡張でこの木が伐採されそうになり、設計していた本多静六(林学博士)氏が自分の首を賭けて移植され、イチョウの命を守ったことが名前の由来になっています。本多先生がイチョウを守った勇気は樹木医が見習うべきことです。日比谷公園には学生時代に何回も来ていますので、とても懐かしい場所でした。

永青文庫(文京区目白1-1-1)で、江戸時代の楽しい一句を発見しました。

花見での一句です

楽しみは 花の下より 鼻の下 (仙厓和尚)

第16回サクラ保全管理講座(東京)
平成30年11月7日(水) 13:00~17:30まで
日比谷図書文化館 B1F

小笠原左衛門尉亮軒 氏

小笠原左衛門尉亮軒 氏

花壇綱目(1681年・水野元勝著)

花壇綱目(1681年・水野元勝著)

弘前公園のソメイヨシノ(樹齢140年)

弘前公園のソメイヨシノ(樹齢140年)

樹木医 橋場真紀子氏

樹木医 橋場真紀子氏

第14回桜の名所づくりアドバイザー会議
平成30年11月8日(木) 9:00~13:00まで
東京都港区赤坂2-3-6 コマツビル2階 第4会議室

黒坂登氏(秋田県)

黒坂登氏(秋田県)

鶴田誠氏(兵庫県)

鶴田誠氏(兵庫県)

高階道子氏(宮城県)

高階道子氏(宮城県)

松枝章氏(石川県)

松枝章氏(石川県)

13名の桜の名所づくりアドバイザーが集合して、各地での活動報告をしました。台風で倒木した桜が接木部分からの腐朽に一因があり、実生台木と挿し木台木との関連についての検討会もしました。不定根については時間が足りず持ち越しです。来年は大阪での開催ですが、そのときに再会を約束して解散で有意義な会議でした。

国指定特別天然記念物「蒲生の大楠」での現場研修会

九州地区樹木医講演会が、平成30年10月26日に鹿児島市で開催されました。翌日は、仙巌園・蒲生の大楠での研修会で約30名が参加。日頃の行いが良いのか?天気も晴れで桜島を背景にして楽しく研修できました。

「蒲生の大楠」の全景

「蒲生の大楠」の全景

根元状況・幹周24.22m

根元状況・幹周24.22m

根元空洞部への入り口

根元空洞部への入り口

空洞部の内部(調査用の足場)

空洞部の内部(調査用の足場)

蒲生の大楠では、特別な許可を受けて根元周辺の立ち入り禁止区域や空洞部内に入らせていただき内部の様子を見学できました。内部は腐朽部の状態などを観察するために足場用として設置されていました。姶良市教育委員会・地元樹木医さんの説明もあり有意義な研修を受けました。大変お世話になり、ありがとうございました。本当に感謝です!!

仙巌園・尚古集成館も見学しました。
ヤクタネゴヨウ(マツ科)は、屋久島・種子島に分布している珍しい樹木です。
先月に、老樹は腐朽率70%の理由から伐採されました。これは建物を守るために仕方がなかったそうです。切断面から樹脂が多量に出るのも特徴の一つです。ナタオレノキ・バクチノキ・ショウベンノキは分類学上の正式名称です。

ヤクタネゴヨウの若木(樹齢20年)

ヤクタネゴヨウの若木(樹齢20年)

伐採された古株(推定樹齢300年)

伐採された古株(推定樹齢300年)

ナタオレノキ(モクセイ科)

ナタオレノキ(モクセイ科)

バクチノキ(バラ科)

バクチノキ(バラ科)

ショウベンノキ(ミツバウツギ科)

ショウベンノキ(ミツバウツギ科)

仙巌園の菊まつり・篤姫様の籠?

仙巌園の菊まつり・篤姫様の籠?

桜の授業(学び舎の桜を救おう!)

熊本市立芳野小学校 10月12日

よしの百年桜の経緯のお話(今村能子樹木医)

よしの百年桜の経緯のお話(今村能子樹木医)

運動場で芽接します。

運動場で芽接します。

樹齢100年のソメイヨシノ

樹齢100年のソメイヨシノ

100本の苗に芽接しました。

100本の苗に芽接しました。

今年は益城町の小学校に寄贈される予定で、熊本地震による被害小学校を励ます取り組みです。

紅白花は縁起が良い・シロゴンズイとゴンズイ 熊本県阿蘇郡西原村

阿蘇神社さんと「高砂の松」の縁(えにし)は1000年前から!!

 平成20年、阿蘇神社さんから「高砂の松(写真-1)」が衰弱したので元気にできないかとの相談がありました。根元の低木類・石等を撤去し、土壌改良して養生後10年が経過して、ようやく樹勢が回復してきました(写真-2)。「高砂の松」の後継樹を育てるために高砂神社(兵庫県)さんから「高砂の松」の苗を再譲渡してもらいました。その苗が大きくなるまで弊社圃場(熊本市)でコンテナ育成し(写真―3)、その後平成26年に樹高2mになり本殿境内に植樹しました。現在は、樹高4m近くにまで熊本地震にも負けずに成長(写真-4)しています。
 阿蘇神社さんと高砂神社さんは古来より縁(えにし)があり「神木いぶき」と「高砂の松」として大切に保護されています。
 これらの由来は、阿蘇の神主友成が上京途中に高砂の浦に立ち寄り、友成が杖を突き挿したところ発芽して成長したという伝説があります。それが現在の「神木いぶき」で推定樹齢1000年と言われており、この縁で「高砂の松(国指定天然記念物)」の苗が贈られたそうです。阿蘇神社さんと高砂神社さんとの縁は約1000年前遡ります。「高砂の松」は縁結びと夫婦和合のパワースポットとして参拝されています。

2009年2月4日(写真-1)

2009年2月4日(写真-1)

2018年8月30日(写真-2)

2018年8月30日(写真-2)


2009年2月5日(写真-3)

2009年2月5日(写真-3)

2018年8月30日(写真-4)

2018年8月30日(写真-4)

大津菊陽杉並木(豊後街道)のスギ枝に黄金斑入りを発見!!

この「枝変わり」は杉並木では大変珍しく、スギ葉の突然変異と思われます。スギの斑入り園芸品種では、メジロスギ・セッカンスギなどがありますが、この黄金斑は固定していませんので消滅の恐れがあります(菊陽町原水)。何かの良い前兆であれば嬉しいですね!

屋久杉伝説を少し検証しましょう!!

推定樹齢250年以上のスギ(初代菊陽太郎)が倒木して、保存育種のために挿し木したのが二代目菊陽太郎(写真-1)という後継樹です。この菊陽太郎はスギの変種でアシウスギ (Cryptomeria japonica var.radicans)の系統ではないかと私は考えています。この変種の特徴は葉の開く角度が狭く(写真-2)、手で触ってもチカチカしない、伐採されても萌芽力が強く再生が早いこと等です。別名はウラスギとも呼ばれています。

二代目 菊陽太郎 写真-1

二代目 菊陽太郎 写真-1

二代目の針葉の状況・写真-2

二代目の針葉の状況・写真-2

屋久杉(写真-3)は実生の地方品種で、若木の葉の開く角度が広い(写真-4)ので、トゲがありチカチカして痛いのも屋久杉の特徴です。これは屋久鹿・屋久猿からの防御として進化したと云われています。遺伝解析は森林総研九州で行われるそうですから、結果を楽しみにしています。さらに健軍神社の参道並木も屋久杉ではないと考えています。

屋久杉の実生苗・写真-3

屋久杉の実生苗・写真-3

針葉(トゲ)の状況・写真-4

針葉(トゲ)の状況・写真-4

菊陽太郎と国指定天然記念物「手野のスギ」は血縁関係あり!!

2014年に、菊陽太郎と手野のスギをDNA鑑定(葉緑体の塩基配列の比較)して、血縁関係があることが判りました。推定樹齢2000年と云われる国造神社の「手野のスギ」と菊陽太郎はアシウスギ系統で、葉を触っても痛くありません。仮説ですが、大津菊陽杉並木は「手野のスギ」の子孫の可能性も否定できません。国造神社は豊後街道沿い(阿蘇市手野)にあり、樹高60m・幹周12mの県下最大のスギでした。

元国指定天然記念物「手野の大杉」の挿し木苗

元国指定天然記念物「手野の大杉」の挿し木苗

針葉の状況・写真-5

針葉の状況・写真-5

国造神社「手野の大杉」 幹保存

国造神社「手野の大杉」 幹保存

根系を保存

根系を保存

なぜ、クスノキ街路樹は枯れたのか?

 日射しの強い夏の日、木陰に涼んで樹木(緑)を頼りにした思いを忘れないで下さい。樹木は大気浄化作用を持っているのです。
①2017年8月13日  熊本市東区 国道57号線 クスノキ街路樹の件
植栽後40年のクスノキ(樹高12m・幹周約1.5m・枝張6m)が2016年の夏頃から突然枯れ始めました。2017年に新芽が多芽矮小であることが観察されました。この症状も薬物投与・注入によるものと推察されます。さらに根元幹にドリルで開口された痕があり、6本が被害を受けて、内5本は伐採されました。
①2018年7月12日  八代市臨港線で集団枯死の件
 約35本以上のクスノキが枯れ始めており、生育障害が発生しています。新芽は多芽で矮少化しており、通常の萌芽とは異なり多くが生育不良です。これらの症状から薬剤投与(除草剤など)による生育障害ではないかと考えられます。これらの症状から集団枯死は薬物による傷害の可能性が高いと考えています。
矮小化した多芽性の新梢(八代市)

矮小化した多芽性の新梢(八代市)

異常な新芽・生育不良(八代市)

異常な新芽・生育不良(八代市)

連続して枯死状態の街路樹(八代市)

連続して枯死状態の街路樹(八代市)

新緑もバラバラに発生(八代市)

新緑もバラバラに発生(八代市)

ベッコウタケによる倒木に注意 !!

梅雨時期はベッコウタケの子実体(きのこ)がケヤキ・サクラなどの根元に多く発生し、その部位や腐朽状態により倒木の可能性が高まります。しかしながら、ベッコウタケ幼菌が発生しただけで伐採という診断では、街路樹がかわいそうです。とくに天然記念物など文化的価値の高い樹木は腐朽部の状態により延命治療の選択肢もあり、的確な診断と樹木医の経験(実績)が問われます。もちろん安全確保は最優先です!! 伐採は最高の安全対策ですが、ベッコウタケの駆除技術を高めることは都市緑化を守ることにも繋がると考えられますので、樹木医さんは駆除事例を共有して研究しましょう!!

チハラ桜の腐朽根に発生 (切除)

チハラ桜の腐朽根に発生 (切除)

クスノキの根元周囲に発生(防腐剤塗布)

クスノキの根元周囲に発生(防腐剤塗布)

ヤマザクラ(村指定天然記念物) 防腐剤塗布

ヤマザクラ(村指定天然記念物) 防腐剤塗布

ソメイヨシノ(緑地) 伐採

ソメイヨシノ(緑地) 伐採

ケヤキ街路樹に発生 末期的な症状

ケヤキ街路樹に発生 末期的な症状

ケヤキ街路樹  左正常 右罹病木

ケヤキ街路樹  左正常 右罹病木

倒木したケヤキ(空洞部) 7/6

倒木したケヤキ(空洞部) 7/6

空洞部内に腐朽菌糸が潜伏。

空洞部内に腐朽菌糸が潜伏。

倒木したケヤキには、子実体(きのこ)が発生しなかった? 空洞部内には、腐朽菌の菌糸がありますが、停滞水による根腐れ(フザリウム菌)の可能性もあります。

ベッコウタケの防除例
写真-1 着手前のベッコウタケ

写真-1 着手前のベッコウタケ

国指定天然記念物「麻生原のキンモクセイ」
写真-2 完了 子実体の消滅

写真-2 完了 子実体の消滅

対策例(参考です)
① 子実体(きのこ)と菌床(腐朽部)を切除し、その後に防腐剤(A)と防腐剤(B)を染み込むように塗布。月1回~2回は塗布し、この作業は11月頃まで続けます。
② つぼ穴式土壌改良で根量を増加し、活力剤・発根促進剤等を散布して樹勢を回復させます。
③ 夏場の高温時には、樹体温度を下げるために主幹・枝葉にミストをかけます。
④ 翌春も観察を継続しますが、子実体が再発すれば、それを切除して再度防腐剤(AとB)を塗布します。子実体が再発しなくなるまで繰り返して塗布します。
⑤ 現在の対象木はベッコウタケの発生はありません。

ベッコウタケを完全に駆除することは困難ですが、延命措置という選択肢は残されています。腐朽状態(倒木の可能性)や樹勢も診断しながら、さらに安全対策も講じて作業しなければなりません。最近では、倒木により死亡事故や物損事故などの被害も増加しており、慎重で早急な対応・対策が求められています

自然倒木について
支持根・直根が腐れて、弱い風で倒木した例です。

オオカンザクラの倒木。盛り土障害あり。

オオカンザクラの倒木。盛り土障害あり。

健軍小学校 2016年7月

健軍小学校 2016年7月

ユリノキの倒木。土壌緊密化による根腐れ?

ユリノキの倒木。土壌緊密化による根腐れ?

県立熊本高校 2018年6月

県立熊本高校 2018年6月

国天「川棚のクスの森」は再生できるのか?!!

下関市は「川棚の大楠」の2回目の診断を6月1日から実施しましたが、やはり原因は特定できず(朝日新聞6/5)、枝枯れや衰退化は止まりません(写真-1.・-2)。今の状況では、酸素を送り込む装置だけでは樹勢回復の効果は遠く、逆に空気を送ることで土壌が乾燥して根枯れする可能性もあります。さらに原因を特定できず、有効な対策を執れなかったことで、現在の悲惨な状況を招いたのではないでしょうか? 専門家は、幹に多くの芽吹きが確認されており処置には一定の効果があったと言われていますが、その診断は見当ちがいです!! クスノキは衰弱したら芽吹き(胴吹き)するのは自然で、酸素を送り込む装置などの効果は直接無いと思われます。主幹から30mも離れた場所での土壌調査は意味がなく、根元周辺のツワブキ生育地の調査こそが必要なのです。「大楠」の根元周辺には、元気なツワブキが衰弱した楠の根系発育を阻害しています。したがって早期にツワブキ移植と土壌改良などを行い、根量の増加を促進しょう。その後の養生管理は潅水・活力剤等散布を主にしますが、葉・枝・幹にも十分に散水(噴霧)して高温化した樹体温度を下げるように心がけることが重要です。文化庁・や下関市の担当者は酸素を送り込む処置等が最善との結論を出されたそうですが、残念ですね!!

平成30年2月6日(写真-1)

平成30年2月6日(写真-1)

平成30年5月5日(写真-2)

平成30年5月5日(写真-2)

下記のクスノキは衰弱していた「寂心さんの樟」(写真-3)を土壌改良して根量を増加した結果、(写真-4)のように芽吹いています。この樟は、道路の堅密化で根系の1/4が消失しており、2年前に600m3の盛り土を除去した結果、樹勢が回復しました!!
この工事は、地元を中心として多くの人々の協力と支援の賜物です。感謝です!!

平成27年9月5日(写真-3)

平成27年9月5日(写真-3)

平成30年6月13日(写真-4)

平成30年6月13日(写真-4)

国指定天然記念物「立田山ヤエクチナシ」の自生地は消滅したのか?

本種は自生地とされた場所(1929年国指定)では消滅しているとされていますが、国指定天然記念物としては「自生地で指定」されていますので、立田山ヤエクチナシが無くても指定解除にはならないそうです。自生の八重咲きが再発見されることを期待しています。

拝聖院(早咲き)と泰勝寺(遅咲き)の2品種は挿し木で大量に増殖しており、立田山ヤエクチナシとしての種の保全は確保されています。立田山という冠を頂いた故郷の樹木として、未来に残したい樹種です。龍田西小学校に「立田山ヤエクチナシ・泰勝寺」を3本寄贈しました。子供達の想い出になれば幸いです。

拝聖院の花・5月30日

拝聖院の花・5月30日

拝聖院の株(自宅)

拝聖院の株(自宅)

泰勝寺の挿し木苗とコンテナ生産圃場(自社)

泰勝寺の挿し木苗とコンテナ生産圃場(自社)

6月10日

6月10日

森林総研九州支所の八重クチナシ

森林総研九州支所の八重クチナシ

龍田西小学校へ寄贈・校長先生

龍田西小学校へ寄贈・校長先生