樹種 ボダイジュ シナノキ科
形状 高さ20m 幹周5.5m 枝張り 15m
樹齢 約250年 倉岡氏が天明年間に伊勢神宮より持ち帰る。
場所 熊本県上益城郡山都町小峰 地内
総合診断
令和2年に台風余波により主幹中央部の腐朽部から墓地へ倒木し、墓石や樹林に当たり宙に浮いた状態できわめて危険で、伐採切断するにしても墓石を傷めずに撤去することは困難な作業でした。倒木している総重量は推定10t以上と思われますが大型重機車両を搬入するにしても山道で道路が狭く作業困難な場所です。切断(玉切場所により浮いた樹木が反転して墓石を傷めたり、作業員が怪我することも想像できますので、切断はワイヤーを張り支柱で支えるなどの工夫をして安全管理面でも慎重にしました。切り詰め剪定するときに、墓石に大枝が当たる可能性もあり墓石を壊さないように、一部を先に避難させました。結果、作業中に墓石を壊さず人身事故もなく安全に完了しました。
主幹の中央腐朽部から裂けていますが、大きな腐朽部からコフキタケ(腐朽菌)の子実体が10個以上発生しはじめているなど腐朽の進行が外観より内部が早く進行していたことが分かりました。残った主幹は、腐朽がひどくボロボロで原形を留めていないくらい、危険な立ち木です。主幹から徒長枝、萌芽枝も発生していますが北側からの吹上風が強く折木の可能性が高いと思われますので、根元から伐採することが安全と判断しました。最終的には根元の1.0mくらいの高さで切断し、切断面には防腐剤・殺菌剤などを塗布し、母株を保存するとともに根元周辺に群生しているヒコバエの生育を見守ることが重要と考えています。
菩提樹は生長が速い樹種の一つですが、腐朽菌に弱くコフキタケの発生が多く見られたのは、内部腐朽の進行が早く北風の吹上げが強いので倒木したと考えられます。
これからの管理養生としては、今回の作業で倒木の心配はなくなり安全管理については限りなく低下したと思います。問題はヒコバエの群生を間引きしながら5本~10本程度にまで間引きする管理を継続し、文化財としての価値を守ることです。これからの管理は特別な養生をすることはなく、関係者で見守ることが必要です。