国指定天然記念物「下城の大イチョウ」の大枝折れの修復

農林水産大臣認定 第316号樹木医 今村順次

 令和6年5月7日の夜7時30分ごろ、大雨で強い風が吹き荒れており南側に伸びていた大枝が折れて隣接する建物の屋根に落下しました。屋根は大破して周辺の小枝や幹にも損傷が発生していた。幸いなことに、人的被害はなく樹勢については観察して治療すれば10年くらいで回復すると考えられます。

南側から

折れた大枝が建物・屋根に落下

折れた大枝(矢印)

折れた大枝(矢印)


割けた大枝(矢印)

途中で留まった大枝(矢印)

支柱に乗っている大枝(矢印

側道と屋根に落下した状況

概略

枝折れした大枝は、,根元から高さ約4.0mの所にあります。直径60㎝~70㎝で長さ10m~15m以上あり、折れた大枝の総重量は10t前後と推定しています。落下している枝・枝葉などの合計で7tを見積りしています。水揚げ時期ですから、特に重量は増加して、樹皮は剥けやすくなっていますので用心すべきです。
枝が密に広がっていますので上からゴンドラ(作業箱)を下すのは困難ですが、他の方法で安全管理を優先にして作業する方法も一つです。他に4tユニックで折れた枝に近づきチェンソーで切断します。25tクレーンで吊り上げて玉切りにして、少しずつ空地に仮置場に積み上げて処分場まで移動(搬出)します。
切断部は殺菌剤トップジンM・人工樹皮ラックバルサンや墨汁等を塗布しますが、形成層周辺や心材辺りは鋭利な刃物で処理して再生しやすい状態にします。作業ヤード内に入らないようにカラーコーンで囲み、安全管理を優先します。
対象樹木は、国道より4m~10mくらいの高台にあり乾燥しやすく湿気が少ない場所に生育していますので、地元の老人会さんたちに葉の伸長時には乾燥化が進みますので潅水は頻繁にされることをお願いします。沸騰化の時代ですから、根系だけではなく低所の根元・枝・葉まで散水されることをお願いします。今回の枝折れ被害は小さくはありませんので、養生管理は継続してお願いします。

以上