九州での開花宣言は、平成31年3月20日に長崎で開花宣言され、3月21日に福岡が続いて、熊本は3月26日で平年より3日、昨年より9日遅れの開花になりました。熊本地方気象台は遅れた理由として、休眠打破が暖冬で進まず、3月中旬以降の気温が低かったことが影響していると分析しました。これは「開花を観て、木を診ていない観測」ではないかと私は考えます。熊本地方気象台の標本木は、平成23年に合同庁舎への移転を機に新しく植えられたソメイヨシノですが、熊本駅周辺事業の計画地盤高の変更等があり、結果的に植栽地盤高との差が生じて深植え状態になり、根が呼吸できにくい環境になっていると指摘されています。桜類は浅根性なので深植え状態に耐えられる樹種ではなく、植栽後の呼吸困難による後遺症で樹勢が衰弱して、開花が遅れたことになります。周囲のソメイヨシノは開花しているのに標本木だけが開花できなかったのは、標本木自身に問題があると考えられます。
桜標本木(写真-1・2)は外見からも下枝が低い位置にあり、深植えされていると判断できます。さらに根元に電線類が埋設されて根系切断も考えられ、樹形も小枝が歪曲し始めており、このままでは来年以降も開花が遅くなると推察されます。桜以外に標本木の植樹帯はヤマモミジ(写真-3)・イチョウ(写真-4)等もあり、それらも主幹・枝の枯れ下がり症状が診られ衰退化しています。
熊本の桜開花宣言が遅れたのは気象関係ではなく、深植え等による根系障害で、人災の可能性もあるのではと私は考えています。