「一心行の大桜」はどこから南阿蘇に来たのか? 葉より先に花が出て咲きますので、分類学的にヤマザクラ(写真-1)ではありません。しかし花や葉の形はエドヒガンでもありません。オオシマザクラ(写真-2)とヤマザクラ・エドヒガン等の種間交雑した品種ではないかと考えています。DNA鑑定(RAPD分析)でヤマザクラとした樹種同定(2003年)には無理があります。それは試料として使われたヤマザクラが関東産でオオシマザクラと交雑している可能性があるからです。またツクシヤマザクラとの説もありますが、戦死した矢崎城付近には自生していません。
では大桜さんは、どこから来たのか? 歴史を遡れば、峯伯耆守惟冬の長男(惟尚)が出家して「了順和尚」として京都へ修行に行き、その帰路に吉野山で桜苗(実生)を購入して持ち帰り菩提樹として植えたと私は考えています。1635年に「了順和尚」が徳正寺を開き、その後に大桜を拝んで一心に行を重ねた事が名前の由来と考えられます。
写真-3の左側に立つと、大桜の爽やかな甘い香りが漂います。これはオオシマザクラ特有のクマリンの香りで、桜餅の葉の匂いと同じで、ヤマザクラなどにはありません。
さらに平成16年8月の台風で倒木した枝を染料として草木染にしました。白い布が鮮やかなピンク色に染まり、感動的な美しさでした!!
「一心行の大桜」が歩いた!
倒木更新で叢生(株立ち)して根元から離れていく様子を歩くと表現しています。90年前は、1本立ちだった(写真-4)のが倒木更新して今は6本立ちになり、根株は1m~2mほどの隙間(写真-5)ができていますので、少し歩いたなと思います。
幹周が7.35mと紹介されていますが、これは株立ち本数の幹周合計です。単木最大の幹周は3.5mですから、誤解のないように。
桜類や梅類(臥竜梅)は倒木しても再生(更新)しやすい樹種でもあります。熊本地震の影響で倒木しそうな幹もありますが、樹形は年代により多少は変化しますので気長に待ちましょうか。